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#1

 第一章 Open 


  Prologue


 それは、暑い夕暮れだった。

 焼け跡となった村を、一人で歩いていた。呆然と、散漫と、蹌踉と、踏みしめるごとに、現実が足裏からじわりと滲み出していく。

 灰となった家屋の連なりに、当然のように焼尽した自分の家があった。そこに転がっている焦げた身体の部位が自分の家族のものだと、頭の中の奇妙に冷静な部分が正確に把握しただけで、それ以外はどうにも思えなかった。光景が光景以上の意味を持っていなかった。

 広場には一人、丈長のローブを着た女性が立っていた。沈痛な面持ちで祈りを捧げている。

「宣教師さん」

 声をかけると、ばっと顔をこちらに向けて、ただならぬ表情で駆け寄ってきた。

「ロエルくん……無事だったのね……」

「無事じゃないよ、井戸に落っこちるし……家はなくなってるし……」

「……」

 ひしと、抱擁された。ふいにあてがわれた身体の線、やおら伝わる体温に載せて、現状が静かに押し寄せてくる。繊維に染みが広がるように、絶望が遅れてやってきた。

「あ、あ、……あぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁ」

 慟哭するしかなかった。

 あまりにも無残で圧倒的で容赦のない現実の前で、自分を見失わないためには、自らの絶叫の声を聞くしかなかった。

「生きるのよ」

 その叫びごと抱きしめて、宣教師の女性は言った。誰かの言葉でなしに、彼女の言葉だった。

「ここに住んでいた人々の全ての命を、今、あなたは背負ったの。その命を無駄にしないで、生きて……そして、変えるのよ。こんなことが二度と起こらないように」

 悲愴に染まる意識の中、その言葉はあまりにも鮮烈に、どうしようもなく明快に響き渡った。

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