表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

死神さんとある日の会話

これほどまで雪が積もった街を見るのは初めてだ。私は公園に設置された塗装のはがれた青いベンチに座り、くたびれた駅の先に見える景色を眺めていた。ハクモクレンの木々が輪郭も分からないほどに白い雪で覆われていた。


 降りやむ気配もなく私は背中にもう一枚カイロを貼らなかったことを後悔しながらひっそりと太陽が顔をのぞかせるのを待っている。


「兄ちゃん。となりいいかい?」


 声が聞こえて私は一人分のスペースを作った。男はやせ細り、口の中に一本寂しく残る前歯が印象的だった。ボロボロのよれたシャツの上にそれ以上にボロボロのダウンジャケットを羽織り、片手にワンカップを持っている。


「こんな早くからお酒飲むんですね」


「これが俺の楽しみなのさ」


 男はくいっとカップを傾けて半分ほど飲み干すとニコリと歯茎を見せて笑う。


「お兄ちゃん仕事は?」


「仕事してるよ」


「そうかい」


 そう言うと男はけらけらと笑いだして残りの酒を胃袋に収めた。


「なぁ。兄ちゃん?」


「なんでしょうか」


「死ぬのは怖いかい」


「いいえ」


「強いな兄ちゃん、俺はたまらなく怖い」


「それは死後の世界を知らないからでしょう」


「兄ちゃんは知っているのか」


「興味がない。でも怖がる必要はないでしょう。すべてがゼロに戻るだけです」


 しばしの沈黙の後私は腰を上げて何事もなかったかのようにその場を後にした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ