偽りの気持ち
偽りの気持ち
「素敵なお店だったねー。ご飯も美味しかったし、予約取るの大変だったんじゃない?」
「いやっ、全然! 大したことないよ」
「ホント? 嬉しい!」
「俺はユリが喜んでくれたらそれだけで嬉しいんだ」
「ありがとっ! また来ようね」
私は彼氏にいつも高いお店に連れてってもらっている。彼は私のことを全身全霊で愛し、私のことをいつも可愛いと言ってくれる。私も彼を直接褒めて褒めまくって、彼の友達の前でも彼のことを素敵な恋人として褒めちぎっている。
「ユリはよほど俺のことが好きなんだな~いやー照れるなぁ」
「そうだね。好き。ねえ、それよりさ、この前出来たばかりのレストランに行きたいんだけど~行ってくれるよね?」
「喜んで行くよ! ユリの為なら俺にはお安い御用だよ」
「ふふっ、ありがと。さすがわたしの彼氏だよね」
「いやー嬉しいこと言ってくれるなぁ」
彼は本当にイイ人。わたしにとって、最高のパートナーだね。
「ここのお店だよね。こないだ出来たばかりの……って、すごい混んでるなーそれでも行くの?」
「当然でしょ? せっかく、あなたが連れて来てくれたのに……ここまで来て行かないなんて損でしょ」
「だ、だよなぁ。じゃ、行こうか」
「うんっ! だからあなたが好き」
「いやーはは……」
目的のお店にふたりで手を繋いで向かうものの予想以上に混雑していて、思わず彼と手が離れてしまった。こうも人の波に流されるなんて思わなかったな。
「ユリ~どこ~? お、俺はここにいるよ!」
「わたしは、ここだよ! ねえ、先に行ってて。わたし、あなたに贈りたい物があるからそれを買いに行ってくるね!」
「わ、分かった! じゃあ、先に待って席に着いてるからね~」
便利な言葉……あなたに贈る物なんて最初からありもしないのにね。あ、でも、お花くらいは贈ってあげようかな。いつもご馳走してもらってるし。
「お待たせ! いい席を取ってくれたのね。さすが私の彼氏! そんなあなたの為にお花を贈るね」
いつも美味しいお店、高いセレクトショップ、そんな彼の為に花をプレゼントしてあげた。
「綺麗だね~これ、何の花だっけ? 名前が出て来ないけど、見たことある」
「わたしの名前は?」
「あ、ユリの花かー! しかも黄色って珍しいね。ユリの花っていつも桃色ばかりな気がするけど、黄色いユリって何か意味があったりするのかな?」
「どうかな~大した意味はないよ。いつもご馳走してくれてるし感謝の気持ちだよ」
「そ、そっか。そうだよな、ユリから花を貰えるだけで奇跡みたいなもんだもんな! と、とにかく、嬉しいよありがとう!」
そう、その調子でもっとわたしに貢いでね……素敵な彼氏さん。




