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心に咲きし色の花-叶わぬ恋も想い出に-♭  作者: ハルカ カズラ
失恋の章
27/40

夢で逢えたら

                夢で逢えたら



 理不尽な理由で彼氏にフラれた。


 しかも、彼氏の誕生日に! この日の為に相当無理をして相当な額のプレゼントをやったのに。まさかやった後にフラれるとは思わなかった。すっごく、腹が立つ!!


 はぁぁぁぁ……


 今週はバイトのシフトはかなり少なくて、それなのに飲み会が控えててお金マジ、やばい。ため息しか出ないんだけど。


 何かいいバイトはないものか……そんなことを思いながら駅前をフラフラと歩いていたら、ふと見上げた看板が目に付いた。今まで気にすることの無かった日払いバイトの募集だった。わたしは無駄な事に奮発したおかげで今すぐにでもお金が欲しかった。


 もう正直、何でもいい! お金さえもらえれば何でもいい。何よりも、目に付く看板に目が止まったということは、惹かれるものがあるからだと思う。看板もオシャレだったし、そこに決めた。


 たぶん、登録をしてメアドとかを教えた仕事の紹介を受けるんだろう。そう思いながら、看板に書かれていた道順通りにその場所へ向かった。


 予想よりは綺麗なビルの地下にあって、階段を下り扉を開け部屋の中へ入ると、そこは何とも静かな雰囲気が漂っていた。本当にここで合ってる? そう思っていると、何とも爽やかそうなお兄さんがクスっと笑いながらわたしに声をかけてきたじゃないですか。


「もしかして、バイトをしにきてくれたのかな?」


 なんて、控え目で優しく言ってきたのでわたしは思わず、『はい! そうです』と返事をしちゃった。男の人はとても穏やかに対応してくれた。すごく柔らかな態度で仕事の内容を話し始めるものだから、わたしはてっきり夢か幻でも見ているんじゃないかと思ってしまう。


「それでですね、あなたの仕事はここへ来てくれた男の方を癒やしてあげて下さい。そうすると、あなたも癒されることになりますよ」


 それって、怪しげなお店のことなのだろうか? 癒しってことはそういう意味にも取れるよね。ただ、報酬金額を聞いたら、そんな不安が吹き飛んだ。そしてそれに見合うことを、わたしに求められているということも理解した。


 はっきり言って、彼氏がいる時とかには絶対に手を出さない仕事ではあったけど、彼氏にフラれてしまったし、わたしは自暴自棄になったのかもしれない。もう今のわたしは、どうなっても構わない。そう思ってしまった。


 そんなことを思いながら呆けていたら、わたしにとって最初で最後のお客さんが来てしまった。やっぱり妙にドキドキするし変な人だったら嫌だし、帰りたいとか思っていたけど、思いの外優しくて爽やかな男性で正直驚いた。


 仕事はなんてことのないこと。いかがわしいことをするわけではなく、話をしたり、肩をもんであげたり……あぁ、癒しってそういうことね。なんて思いながら仕事をした。


 これっていわゆるリフレクソロジーみたいなものよね。


 そしてなんといっても、このお客さんは綺麗な顔をしていて整っている超イケメンな人! ラッキーすぎる! こんなちょっと怪しげなお店に来て、癒やされたいなんて思って来るんだ~! 


「あなたと逢えて嬉しいですね。仕事が忙しすぎて滅多に来られそうにないですが、良かったらあなたの誕生日をお教えいただけませんか?」


「誕生日、ですか。4月21日ですけど……」


「ありがとうございます。では、その時にまた来ますね」


 が、わたしにとって最高にラッキーなお客さんは最初で最後だった。そう甘くないよね……ここに来るお客さんがみんな顔の綺麗な男性とは限らないわけで。当然だけど、客層は圧倒的におじさまが多かった。そうなると、心の癒しも薄れていく。そして、わたしはバイトをやめた。後になってわたしの誕生日の誕生花を調べてみたら、そういうことだったんだなとつくづく感じてしまった。


 あぁ――また、あんな綺麗な顔つきの男性に会いたい。夢でもいいから夢で逢えたらいいな――

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