小さく、可愛い贈り物……
小さく、可愛い贈り物……
「これ、やるよ」
「急になに? どうしたの」
「いつももらってばかりだし、たまには俺からやろうと思って買って来た。もらうだろ?」
「そういうことなら……花の名前とか知らないの?」
「知らないな。けど、一葉にぴったりだろ? お前、小さいし可愛いし、肌白いからこの花見てピンと来たんだ。だから、やるよ」
普段はわたしから彼にプレゼントを贈ったりしている。けれど、誕生日でもない日に何の気まぐれなのか、彼は私に花をくれた。彼自身はこの花の名前も、この花をわたしに贈ることに何の意味も理由も考えずにくれたのかもしれないけれど、私は知っていた。そして、この意味は後日、思い知らされることになる――
「ちょっと! その女、誰?」
「ん? 彼女だけど。それがどうかしたか?」
「どうかしたか? じゃない! な、何で平気な顔して浮気出来るの? 話して!」
「って言われてもな。でも、一葉も俺の彼女だしな。そう怒るなよ」
まるで悪びれる様子もなく、彼は別の女とどこかへ歩いて行ってしまった……確かに別れてもいないし、喧嘩もしてないから彼とは付き合っている状態。だけど、こんなの納得できるはずがない。
彼がそういうことなら……そう思い立って、私も普段よりも気合いを入れたメイクと、服装に気を付けてナンパ待ちをすることにした。
気合いが入ったのが幸いして、ナンパ男が声をかけてきて私はその男と腕を組んで歩き出した。普通にその辺のカフェに入ったりして、その場で別れようとするとナンパ男は調子に乗り私をホテルへ連れて行こうと強引に腕を引っ張り出した。
「ちょっと! そんなつもりないってば。離してくれる? 帰るし」
「ふざけんなよ? そっちが誘って来たんだろうが!」
マジでやばいことになりそう……そんな時に彼が通りがかり、ナンパ男に睨みを利かせてあっさりと助けられた。
「あ、ありがと」
「いいって。お前こそ気を付けろよ? 俺と付き合ってんのにナンパ男に付いて行くなよ」
「う、うん」
あぁ、やっぱり彼は彼だ。私とこうして腕を組み、安心感を与えてくれる。あの時見た女はきっと、大した意味のあるコトバでは無かったんだ。この時はそう思った。
後日、気分を良くして新しい服を見に街を歩いているとまた彼が別の女と歩いていた。さすがにこれには腹を立てて、女と引きはがして彼を問い詰めた。
「何でまた別の女と歩いてるわけ? 私のことは彼女とも思ってないの? どうなの!」
「あん? 彼女だろ。でも、あの子も俺の彼女だ」
「はぁ!? そんなの納得できるわけないじゃん! 浮気じゃない! どう見ても」
「違う。お前も俺の彼女、あの子も俺の彼女だ。俺の近くにいる女はみんな、彼女だぜ? だから浮気とかじゃねえし。そう怒るなって。明日またお前とデートするから」
「なっ……!? なにそれ……」
「じゃ、そういうことだし行くぞ? またな」
嗚呼……彼が私に贈った花はやっぱりそう言う意味を込めてたんだ。オリヅルランの花……小さくて可愛いけど、浮気癖がある。そんな意味を彼は知ってか知らずか、私にくれた。
こんな関係なのに、それなのに私はしばらく彼と別れることなく付き合うしかなかった。喧嘩も無く、仲が悪いわけでもない優しい彼と別れるイメージが湧かなかった。たとえ目の前で浮気されていても――




