ヤキモチやきの野ばら
なんか、何かムカついた。だから、わたしは好きな人を見かける度に体当たりをすることにした。
「はい、あ~ん……」
「んー」
お昼時間は大好きな彼、セージに給食を食べさせるのが喜び。席替えして、席が隣同士。他の子に文句を言われる筋合いなんてないし、思う存分に彼の近くに寄りそうわたし。
「のばらは俺の母ちゃんみたいだな~」
「違うよ。セージくんって、すぐシチューとかこぼすじゃん! だから、わたしがスプーンですくって口に運んであげてるの。もちろん、セージくんのことが大好きだからだよ。お母さんとかと違う想いなの!」
「んー? そうなのか~それならいっか~のばらは俺が大好き。うん、俺も好きだよ」
「うんっ。もっと言って~」
セージくんはまだまだ恋とかそんな想いで好きを分かってないけど、わたしは彼の近くにいるだけで心臓は常に花火が上がる感じにバクバクしてる。大好きな彼の傍に常にいたいって思ってるわたしは他の子の行動とか、無意識に彼が他の子と距離が近いだとかでいつもヤキモチをやいている。
「セージくん、はい、チョコ受け取って~」
「はいこれ~本命だから、今日中に食べてね」
「おー! すげー何だ? 今日何の日なんだ~? ラッキーすぎる。タダでチョコもらった~」
セージくん、それバレンタインだよ……それはともかく、どうして他の子からもらうの? 駄目だよ……
ドーン!!!
「いってぇ~~の、のばら? な、なにすんだよ~」
「どうしてわたし以外の子からチョコなんてもらうの? しかも喜ぶの?」
「タダでくれんだぜ~? もらっちゃうじゃん。よくわかんないけど、くれるんならもらうよ」
「ダメ!! セージくんはわたしの作ったチョコしか食べちゃダメなの! だから、今すぐそれ返してよ」
「ええ~? もったいないな~じゃ、じゃあ、帰る時に返して来るから怒らないでよ」
「うん! それならいいよ」
授業が終わって、帰る時廊下でセージくんに声をかけようとすると、またしても別の子がチョコをあげている。しかも何だか嬉しそうな顔で受け取っているセージくん。
ムカつく……どうしてもらっちゃうの? 駄目なんだってば! 他の子が手を振って、セージくんの元から離れるのを見届けて、わたしは彼に向かって猛ダッシュ……
ズドーーーーーーン!!!!!
「うおっ!? ってぇ……すげー衝撃だ。って、またのばら!? ど、どうして体当たりしてくるんだよ。び、びっくりするだろ? それに結構痛いし……」
「駄目なの! セージくんはチョコもらったら駄目」
セージくんは分かってないだろうけど、わたしはキミのことを考えると苦しくて、ふわふわして他の子がキミの近くに寄るだけで、ヤキモチを焼くんだよ。分かってよ……
わたしはセージくんとだけ、燃えるような恋をしたいだけなんだから――




