第九話 手掛かりは記憶の彼方
「早朝から空を覆っていた予報外れの雲は7時ごろにはすっかり晴れ、今日は1日晴れとなる模様です。続いてのニュースです。ここ数日、駅前で…」
青空の下、ほとんどの人が傘を持ち歩いている異様な風景の中、学校へとむかった。教室へ行き、いつものようにクラスメイトと挨拶を交わす。席へいくといつもおれより早くいる本田くんの姿がなかった。
(風邪でもひいたのかな?)
チャイムがなり、先生が教室へきたが、いつもと様子がちがうようだ。
「みんなおはよう。急だが、本田は昨日をもって転校した。先生もいきなりのことで驚いたが、なんでも親の仕事の都合らしい。昨日電話があってな。」
教室は少しざわついたが、あまり気にしていないようだ。それよりもやはり、岩田の話をしたいようだ。無理もない。昨日のあの一件から姿を見せず、今日も来ていない。もともとこの時間にいることの方が少なかったけど。
それ以外はいつもと変わらない1日だった。あさひさんは体調不良ということでお昼頃にはかえってしまったけど、それ以外はなんの問題もなく、むしろ岩田がいなくなっていつもよりも平和な日だったと言えるだろう。そうでなくては困る。
今日は部活がないので、赤嶺との帰り道、駅前のハフホナルドへ行くことになった。駅前で怪しいビラを配っている人がいるという噂が最近流れていて、赤嶺はそれが気になっていたようだ。だがあいにく今日はいないようだ。
「都市伝説とかおもしろいよな。高橋はお化けとか信じるか?」
「お化けがいたら織田信長に呪われたいな。」
「どんな願望?本能寺の変態か。」
「そりゃ明智くんにも謀反されますわ。」
「そんなことより!噂のやつ!!いなかったなぁ。」
「もともといないんじゃない?いても警察に通報されたとか。」
「あーそうかもな…。」
ふと外に目をやると、あの男が店の外に立っていた。じっとこちらを見ている。
「あいつっ…!!」
おれは勢いよく席を立ち、店を出たが、もう男はそこにいなかった。いい加減あいつの正体を探らないとだめだな。これで会ったのは二回目でない。ずっと昔に、どこかで会ったことがある、そんな気がするんだ。
「どうした高橋。トイレか?」
「なわけないだろアホ嶺。」
「あーそれ禁句な!」