第五話 正義の狼煙
ぼくは教室へ急いで戻った。岩田くんに絡まれるといつも痛い目にあうから。でも僕は彼に助けられたことがある。命の恩人だし、根っからの悪者ではないって信じてる。
「おーい、ホンダホーン!」
(こんな変な呼び方するのは岩田くんだ…)
「おい!呼んでんだろ!」
「な、なんだい…」
「さっきはいきなり胸ぐら掴んで悪かったな!熱くなっててよ!はははっw」
「全然気にしてないから…別に…」
「んだよ!気にしろよ!男だろぉ!?」
「どっちなんだよぉ…」
「わりぃわりぃw」
結局岩田くんに絡まれながら教室へ戻ると、教室の前で人だかりができてた。
「なんかあんのか??」
岩田くんはそう言うと、人ごみをかきわけて突き進み、教室へ入っていった。あとに続いていくと煙が出ていた。しかも岩田くんの席から。
「なんだよ!!くそっ!!」
岩田くんは慌ててカバンを開けて中身を全部だした。ゲーム機やら財布やらが机の上や床に散らばる。どうやらスマホのモバイルバッテリーから煙が出ているようだ。
大騒ぎしていたので先生も何人かきていた。火事になるほどのことではなさそうなのでホッとした…。あんな安物使うからこんなことになるんだよ。とは本人に言えないのでとりあえず事態を見守ろうとしたが、そのとき。
「おい岩田、これなんだ?笑」
男子の一人が岩田のカバンから出てきたものを拾いながらそう言った。そして広げるとそれはストッキングだった。
「お前どうしてこんなの持ってんだよww」
「お、おれのじゃねぇよ!!!」
「どんな趣味だよww」
そうこうしてるうちにクラスの女子たちが戻ってきていた。そしてこの騒ぎ、やり取りを見てこそこそ話している。
「なんの騒ぎ?」
「なんか煙くない?」
「というか、岩田のやつのストッキングなんなの」
「もしかして前にあさひがなくしたっていうやつかも」
「うっそ!岩田が盗んだの!?キモすぎんだけど」
どんどん話は広まり、収集がつかなくなった。その場にいた先生たちが生徒に自分の教室に戻るように指示し、岩田を連れ出した。岩田は必死に抵抗し、否定していたがこの場の空気は変わることはなかった。