第四話 慣れた痛み
突き指をしたおれは、先生に湿布をもらいに行った。
「お前またか!その指は突き指をするためについてるのか?」
「うるさいですよ。だれも好きでついてないです。とりあえず湿布くださいな。」
「あーすまん。そいや湿布きらしてたわ。すまんが、保健室にいってもらってきてくれないか?」
「いつものことですね。いってきますよ。」
「わるいな。」
こうしておれは保健室へいくことに。皆が授業をしている中、静かな廊下を歩くのはなんとも言えぬ背徳感があってドキドキするものだ。今は違った意味でも緊張しているが。
階段を2つ上り、目の前の教室に入る。ここは 2-A。おれの教室だ。
扉は最後におれが出た時のまま開けっ放しであった。どの教室も廊下側の窓は曇りガラスで、だれにも見られることなくここまで来れた。まっすぐ自分の席へむかい、カバンからおかしを取り出す。これはあさひさんが大好きな「ほへほチップス~カレーうどん味」。味が微妙なうえ、なんとも言えないしっとりとしたパウダーで指が汚れまくるので人気大不発。
3口ほど食べると指はかなりベトベトだ。カバンからストッキングを取り出し、ふともも当たりの部分で指を拭く。あさひさんはよくこれを食べるとその当たりで指を拭いてしまう癖があるのだ。意外とだらしないとこがあることに好感をもてる。
決して女の子として好きとかではないぞ!!
だれに言い訳してるのだろうと冷静になった俺は、さらにカバンからモバイルバッテリーを取り出す。岩田が使っているのと同じモデルだ。
ストッキングとモバイルバッテリーを持ちながら、岩田の席へむかう。岩田のカバンを開け、ストッキングは奥底へ、モバイルバッテリーは交換しスマホへ接続する。
(これでやることは終わったか。)
交換したモバイルバッテリーをおれのカバンへしまい、保健室へとむかった。
保健室にいくと、先生は寝ていた。おれが最近貸したゲームに没頭しているのだろう。ここ数日いつも寝不足なようだ。湿布を拝借し、そうそうに立ち去る。
体育館に戻り、先生に余りの湿布を渡してから、授業が終わるまで普段通り過ごした。指が痛いせいか、気持ちが高ぶっているせいか、シュートは全く入らなかった。
「高橋、シュート外したくせにニヤニヤすんな、頭のネジも外れたのか?」
「締め直したいけどドライバーは忘れたもんでな」
「うまいこと言ってないで勝ちに行こうぜ!」
「赤嶺こそ今日は得点してないだろ?」
「おれはこれから本気だすんだよ!」
こいつはおれの幼馴染で、何度もおれを救ってくれた。腐れ縁ってやつだ。こいつがいなきゃ今のおれはなかったな。隣のクラスだが、体育は2クラス合同でやるので体育の時はいつもこうやって張り合っている。
キーンコーンカーンコーン。
チャイムがなり、授業が終わった。