第一話 ヒーローはヒーローとは限らない
ボスは最期に言ったんだ。
「おれは正義のヒーローになりたかったんだ…。」
2012年10月、おれはコンビニで万引きをし、それが見つかってつかまったのだ。
「君、歳とーっ…あと名前。」
店員さんは20代半ば、眼鏡をしていて、イケメンとは言えず、声色は優しめであった。
「高橋ヒロ…17。」
おれは顔をふせながら答えた。
「未会計の商品は、このモバイルバッテリー3個、おかし、それと…ストッキング…君は変態か?」
唐突な質問に思わず唖然とする。とりあえず、
「ど、泥団子を作るのに使えるんで…」
口をついた嘘がこんなだとは思わなかった。
「泥団子はいいよなっ!!昔はよく作ったなぁ。いや、もう20年も前だから君はまだ産まれてないか!はっはっはっ」
(この人が馬鹿なのは助かった。)
「とりあえず、君学生だね?学校に連絡して、それから保護者にもだね。」
(それはまずい…どうしy)
「「「ドンッ!」」」
事務所の扉が勢いよく開いた。
「うちの息子がほんっっっとに!!迷惑をおかけして!!!!申おおおおおし訳ない!!!」
ドアを蹴破ってきた大男が、その勢いのまま土下座をしていた。
その勢いにおされたのか、その後すぐに解放された。店員さんから
「もう2度としないこと。盗んだストッキングでつやつやにしても泥団子は喜ばない。」
ということを何度も念押しされた。あっけなく自由の身になれたわけだが問題がある。
「おっさん、あんたは一体だれなんだ?」
おれは助けてくれた(と言っていいのか)その大男に言い放った。