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「なるほど。白井さんを皮切りに、君たちにも連鎖的に不可解な力の発動が起こったということですね。
しかも、一人一人違う種類の能力を持っていると」
工藤の言葉に一眞はそうですと頷き、SDF隊員が用意した麦茶を飲み干した。
工藤は今後のことを考えながら、最初の報告にあった少女に憐憫の眼差しを送る。
少女は泣き腫らした目で重そうに瞬きを繰り返し、両手で抱えたコップの水面を見つめていた。
琴子からの衝撃波で、工藤は肋骨を負傷していた。おそらくは骨折していたのだろう、痛みに呼吸もままならぬ中、そこから彼を救ったのも琴子だった。
ごめんなさい、ごめんなさいと何度も繰り返し、泣きながら自分の身体に触れて傷と痛みを癒していく彼女の顔は、一生忘れることはないだろう。
普通の子なのだ、と工藤は思う。ここにいる彼らは皆、平和に日常を過ごしていたごく普通の高校生なのだ。
いつかは日本へ帰国し、それぞれの夢へと向かい、そして幸せな人生を送るべき子どもたち。
――だからこそ、俺は先生が憎い。
永谷の言葉に含まれた強い無念を、工藤はようやく理解した。
波状のように湧き上がる罪悪感が自分の頭をも占領し始めるのを、ひしひしと感じる。
(先生。わたし達は、一生かけても償いきれない罪を、この子達に犯してしまったのですね)
すでにこの世にいない恩師を、羨ましくさえ思った。
逃げたい、と願う。しかしそれが許されぬことだというのは考えるまでもないことだった。




