表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
0の刻印【第一部・すべての始り】  作者: やまかわ まよ
第6話【SDF】
73/76

6-11


自らの胸を拳で殴り、刻印を引っ掻いた。

何度も、何度も、何度も。

跡形もなく消えてしまえと思いながら。


「白井さんっ!」


工藤が声をあげ、彼女の腕を掴む。


「はなしてっ!!!」


振り払おうと琴子が叫んだ瞬間、彼の身体は大きく後方へと吹き飛ばされた。

背中を床に強く打ち付け痛みに咳き込む工藤の姿に、彼女の瞳が恐怖の色に染まる。


「あ……」


言葉にならない声が唇の間から漏れていく。

いやだ。傷つけるつもりなんてないのに、どうして。

藤の肩口から噴き出した鮮血が脳裏を支配した。

正常な思考力を失っていた琴子は、それすらも自分のせいなのだと思い込んだ。


「あああ来ないで! 来ないでっ!! くるなああああああっ!!!」


よろよろと立ち上がり、腕を出鱈目に振り回す。その弾みで彼女の手から飛び出したエネルギーに、先ほどまで囲んでいたテーブルがなぎ倒された。

自らを抱きしめ、琴子は身体に爪を食い込ませる。



「なんでっ!! どうして!?

どうしてこんな思いしなきゃいけないの!?

なんでこんな苦しまなきゃいけないの!?

普通に学校来て普通に過ごしてただけなのにっ!!! どうしてこんなモノが私の中にいるの!? なんで勝手に出てくるの!?


私が、私が一体何をしたのよっ!!!」


激しい動悸が、彼女の身体を内側からバラバラにしようと暴れまわる。

その苦痛と恐ろしさに、琴子は泣き叫んだ。



「響。おい、響っ」


呆然とその場に釘付けにされていた響は、後ろから肩を叩かれはっと振り向く。

翔が、琴子を注視したまま彼の耳元に口を寄せてきた。


「琴子のために怪我をする覚悟くらい、あるよな?」


彼女を助ける方法があるのか。

答えるまでもないと、響は短く言葉を返した。


「どうしたらいい?」


「響はとにかく琴子に声をかけて、少しずつ近づいていってくれ。俺が琴子に気がつかれずにそばへ行けるように。正面突破でもいいんだが、そしたらきっとさらにパニックになっちまうと思うし」


「それだけでいいのか?」


「ああ。その後は俺がやる」


彼が何を考えているのか、何をするつもりなのか、訊きたいことは山ほどあったが、響はわかったと頷くだけに留め、翔の背中を軽く叩いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ