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「が、学校の地下に、こんな……」
「全然知らなかった……」
翔の洩らした言葉に、永谷がにやりと笑ってみせる。
「そりゃあそうだ。10日前から工事を始めて、昨日出来上がったんだからな」
一行を先導しながら工藤が言った。
「工事と言っても、もともとあった空間をさらに広げてそこに機材を運び込んだだけなんですがね。真上にある学校の底が抜けてしまわないよう補強するのが大変でした」
「そうか、だから学校が休みになったんだね……」
納得したように頷く一眞を横目に、琴子はただただ広い室内を見回していた。
こんな施設をたった10日で。知らないうちに、日本の建設技術は格段に進歩していたらしい。
「こちらへどうぞ。いろいろあってお疲れでしょう、お茶でも用意しましょうか」
そう気遣う工藤を、永谷が押しとどめた。
「いや、時間がない。とにかくまず話をしてやってくれ。午後の授業にまで食い込むのはさすがにまずい」
唇を引き結び、軽く首を縦に振る工藤。
琴子達は促されるまま、機械の横にあるプラスチック製の簡素なテーブルの周りに腰を下ろした。
並べられたパイプ椅子はまだ新品のようで、椅子の背中からは剥がし損なったビニールが覗いていた。
「本題へ入る前に、私は皆さんに謝らなければなりません。」
ふさわしい言葉を探し求めるように、ゆっくりと工藤が話し出す。
「これからお話しする内容を聞き、あなた方はきっとわたしたちの事を憎いと思うはずです。
それほどまでに理不尽で、残酷な宿命を、我々はあなた方に負わせてしまいました」
風向きを図るような、含みのある短い沈黙。
それを埋めるかのように、自動で動き続ける機械の音が彼らの鼓膜を震わせ続けた。




