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階段を下りていくと、その先にある自動扉が鼻息を吐き出すような音と共に開くのが見えた。
その機械的で冷たい雰囲気は、まるでここに入ってはいけないと警告を発しているようで琴子は思わず目を逸らす。
中は約2畳ほどの広さで、7人で乗ると若干の窮屈さを感じた。身体の大きな翔は、隅の方で申し訳なさそうに身を縮めた。
それはエレベーターのようなものらしく、入り口付近に上下を示すボタンが付いている。
工藤が下を向いた三角のボタンを押すと、ゆっくりと扉が閉まり、下へ下へと動いていくのを感じた。
「どれくらい、下がるんですか?」
少々の沈黙が流れた後、一眞がそばに居る工藤に尋ねた。
「大体30メートルと少しでしょうか。地下5、6階分ほどの深さですね」
工藤がその言葉を言い終わるやいなやエレベーターは止まり、音もなく扉が開く。
目の前に広がる光景に、5人は息をのんだ。
セメントでできた床は乾ききった砂地のように白くざらつき、裸の壁はひどく寒々しい色をしているように見える。
全体的に殺風景な内装だが、誰もそんなところを気にしてはなかった。
驚くべきは、その広さ。
真上にある日本人学校の敷地全体、否、それ以上か。天井も高く、その開放感は外にいる時とそう変わらないように思える。
頭上に広がる地面を支えるかのように、太い柱が3本、室内の真ん中あたりに聳えていた。
そしてその柱を囲むように、天井ぎりぎりまで高さのある大きなガラス製の箱が4つ。
箱、と呼ぶにはいささか大き過ぎる気がするが、部屋と呼ぶには簡素な造りをしていた。
そのそばにはそれぞれ一台ずつコンピュータが備え付けられていて、そこから伸びるコードは地面を潜りガラスの箱に繋がっているようだ。
そのさらに奥には、幾つもの液晶が並べられた大きな機械が物々しく鎮座していた。
手前にある4台のコンピュータを合わせても事足りぬほど複雑であり、広すぎる空間の中で一際大きな存在感を放っている。
それぞれの液晶には琴子たちには到底理解のできない言葉や数式が入り乱れており、まるで一つの奇妙な景色のように見えた。
「ようこそ、SDF総本部へ」
工藤と永谷が、扉の両側から迎え入れる。
どこか楽しそうに微笑むその顔は、一瞬双子かと見紛うほどによく似ていた。




