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◇◇◇
「え? なんでここ?」
「あの人たちの基地……だっけ、に行くんじゃなかったんですか?」
非常に見慣れた景色に、一眞が不思議そうな顔をする。
永谷の赤いミニバンは、再び日本人学校指定のパーキングに駐車されていた。
「ああ。だからここに来たんだ」
「この近くに基地があるの?」
「近く、というよりかはここにあるんだよ。
ま、とにかくついてこい」
それ以上聞くなと言いたげに背を向け、永谷は校門をくぐり学校の裏庭の方へと向かっていく。琴子達は急いでその後を追った。
裏庭は学校の北側に位置しており、日もあまり当たらない。スペースも狭く、休み時間でもここに人が集まることはないに等しかった。
ところがその場所に、誰かが立っている。
「お待ちしておりました」
じめじめした裏庭にそぐわぬ、小綺麗な格好をした工藤が軽く会釈をした。
永谷はそれに対し軽く顎をひく。
「では行きましょう。危ないので少し下がっていてください。
もう少し…そう、その辺りで」
言いながら工藤は片手で校舎の壁を弄り、その一部を軽く押した。
カチッ、という微かな音と共に壁の一部分がドアのように開く。その中にタッチパネルのようなものがあることに、琴子は気がついた。
工藤がそれに触れた数秒後、5人は小さな揺れを身体に感じ始める。
「な、何? 地震?」
蹌踉めくほどではないが、地面は小刻みに震え続けている。
ついにメキシコでも地震が起こるようになってしまったのだろうか。そう思った矢先、響が琴子の肩を掴んだ。
「琴、あれ!」
彼が指差す先を見ると、目の前の地面に少しずつ穴が広がっているのが見えた。
ウィーンという音と共にそれはどんどん広がっていき、銀色の、何やら金属のようなもので覆われた階段が姿を現す。
穴が大きめのフラフープほどの大きさになると、音と共にそっと動きを止めた。
「行きましょう。今は授業中のようですが、万一ということもあります」
工藤が階段を下りて先導するも、琴子たちは唖然としたまま動こうとしない。
永谷は彼らの背中を軽く叩き、促した。
「ほれ、早く行け。ここに戻ってこれなくなるわけじゃねえんだから」




