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0の刻印【第一部・すべての始り】  作者: やまかわ まよ
第6話【SDF】
65/76

6-3

◇◇◇


水を入れなおした5つのポトスを、元の位置にそれぞれ掛け直す。

眠っているのだろうか、ポトスたちは穏やかな呼吸を繰り返していた。

ごめんな、と響は心の中で謝る。永谷に促され、後ろ髪を引かれる思いで教室を後にした。

階段を降りてピロティを抜け、小さな正門を出る一行。


「外に行くんですか?」


一眞の質問に永谷はそっけなく頷き、生徒たちを自分の赤いミニバンに乗せた。

エンジンのかかる音とともに車が動き出し、車内には重い空気が腰を下ろす。


「……どこに行くの?」


しばらく続いた沈黙に、亮の声がそっと割って入った。


「病院に行くんだ。ある人に会ってもらうためにな」


「ある人って?」


「物理学者の権威と言われている人だ。その人とお前たちがどう関係があるかというのは、長くなるから今は聞かないでくれよ」


「なんで?」


「いや、だからそれは話が長くなるからだって…」


「その人は俺たちとどんな関係があるの?」


「……おい、話聞いてるかお前」


バックミラーに写った悪戯っぽく笑う亮の顔に、永谷は思わず苦笑した。

次いで翔が吹き出し、車内は笑い声に包まれる。自然と空気も軽くなっていた。


「お前たちに何が起こっているのか、俺も本当は話してやりたいんだ。でももう少しで病院に着くし、こればかりは俺の独断では決められない」


ひとしきり笑った後、永谷はふと真顔に戻り後部座席に座る5人の生徒に向かってそう言った。


「要約すれば、お前たちは人智を超える大きな事件に巻き込まれた。そして、ある宿命を背負わされたんだ」


理不尽にもな、と永谷は口の中で呟く。

不安気な5つの視線が後頭部に突き刺さるのを感じていた。

病院の駐車場に車を停める。


「俺から話せるのはこれくらいだ。悪いな」


振り返り、本当にすまなそうな表情で謝る永谷に、琴子たちは顔を見合わせることしかできなかった。

車を降りてみるとそこは市内では有名な病院で、平日の午前中だというのに駐車場はもう少しで満杯になりそうだった。


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