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「待ってください! そんなの嘘だ、学校が始まったらなんでこんなことが起きたのか話すって言ってたじゃねえか! その話ってなんなんですか? 俺たちにも聞かせてくださいよ!」
琴子を守るように前に立った翔の言葉に心を痛める。できることならそうしたいさ、と永谷は心の中で言った。
(でも、無関係なお前たちを巻き込むわけにはいかないんだ)
大切な生徒を危険から守るためなら、自分が嫌われることなどどうということはない。
翔よりも若干背の高い彼は顎をそらし、冷ややかな目で翔のことを見下ろした。
「どうして話さなきゃならない? さっきも言っただろう。お前らには関係ない話だ」
努めて面倒くさそう見えるように頭をかき、永谷は言葉を続ける。
「白井に起こったことと関係がある? 何も知らねえくせに余計なことを言うな。
まさかあの時起こったことを見てたから自分たちも関係があるとか言うんじゃねえだろうな。だからってお前らにできることなんて何もねえんだよ」
一眞が全身に必死さを滲ませながら言った。
「違います!お願いだから話を聞いてくだ…」
「うるせえっ!!」
突然の恫喝に、5人の生徒たちはぴたりと身体の動きを止める。
全員の瞳に恐怖が走るのを永谷は見、一瞬目を閉じた。シャッターを下ろすように。
そしてつかつかと琴子に歩み寄り、ぐいと乱暴にその腕をつかむ。
「……来い」
琴子があまりの力の強さに顔を歪める。
刹那、永谷の手をパシッと音を立てて何かが叩いた。
痛みに思わず手を離す永谷。
自由になった琴子は後ろから誰かに身体を引き寄せられるのを感じた。
「琴に乱暴するな……」
響が立ち上がり、永谷を睨み付けていた。




