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「嘘だろ、響もなのかよ!もしかしたらみんな……!」
ガチャ、という音に亮ははっと口を噤む。
彼と一眞、響の3人は、大仰とも言えるほどびくりと体を震わせ、ドアの方を見遣った。
「おはよ……どうしたの?」
現れた琴子と翔の怪訝な表情に、彼らはひとまず胸を撫で下ろした。時々ではあるが、ホームルーム前の時間に低学年の子供達が遊んで欲しがって教室に飛び込んでくることがある。他の学年の生徒には聞かれたくない話を、今はしていたところであった。
「ちょっと来てくれる?」
翔がきれいに修繕された扉を閉めたことを確認し、一眞が手まねきをする。
琴子と翔は荷物を置き、響の机の周りに集まった。
「単刀直入に聞くね。2人とも……ていうか翔、この連休中に何か変なことが起こらなかった?
主に、自分の身体に」
驚愕の表情で、翔は思わず琴子を見る。琴子もワンテンポ遅れ、彼の顔を見上げた。
どうしてこんなことを訊かれるのだろう。まさか。
2人の様子に、一眞は今にも漏れ出てしまいそうな声を抑えるかのように片手で口を覆った。
「あったんだね、翔にも……!」
一眞の瞳が、狼狽で忙しなく揺れる。
亮は自分の腕を、指先が白くなるほど強く掴んでいた。
「ま、まって、翔にもって……一眞もなの?」
琴子が掠れた声で訊いた。
「一眞だけじゃない。亮も……俺にもあった」
微かに上ずった声で、響が腕を組みながら言う。
翔が信じられないという顔で小さく首を横に振った。
「冗談だろ……全員だなんて!」
無意識に、琴子は服の上からあの十字の刻印が現れた場所に爪をたてていた。
胸元のそれが、じくりと疼いた気がした。




