4-13
嫌な考えに心は揺れ、ざわりと頸のあたりに鳥肌が立った。
ひどい暑さを感じて、汗が止まらない。
「な、なんか暑くねえ?この部屋」
その場の空気をごまかそうと、亮はTシャツの首元を持ちパタパタと扇ぐ。
一眞は不思議そうな顔で言った。
「そう? 今日涼しいくらいだと思うんだけど……僕Tシャツじゃあ寒いもん」
亮は元気だねえと笑う彼と対照的に、亮の顔はみるみる青ざめていった。
別段寒がりでもない一眞が、Tシャツでは寒いと言ってパーカーを着ている。自分たちの体感温度が同程度だというのは、今までの付き合いでわかっていた。
―――なのにどうして、俺はこんなに暑いと感じているんだ?
ばっと立ち上がった時には既に遅く、危惧した片鱗が僅かながら肩に現れていた。
「わ、わり…トイレ…」
慌てて肩を押さえ一眞の前から移動しようとするも、身体はどんどん熱さを増していく。最初のような苦痛こそなかったが、逆にそれが彼の不安をかき立てた。
「亮? 大丈夫?」
ゆらりとよろめいた亮を支えようと、一眞は彼の肩に腕を伸ばした。
「触るなっ!!!」
そのあまりに強い語気にびくりと体を硬直させる一眞。
「りょ……」
「触んな、見んなよ!見ないでくれ!」
顔を覆い、なんとか発火を押さえようと亮は歯を食いしばりながら部屋を出た。
放っておけるわけもなく一眞もそのあとを追いかける。
しかし、目の前の光景に彼は踏み出した足を無意識に戻してしまった。
めらりと目の前の空気が揺らぎ、一瞬で親友の身体を炎が包み込む。
死んでしまう。瞬時にそう思った彼は、部屋に敷いてあった小さなカーペットを掴みそれで亮の体を包もうと近寄った。
「来るな!! 見ないでくれって言ったじゃんかよ!!!」
悲痛な声ではあるもののその声には熱さに苦しむ様子は感じられず、一眞はぴたりと足を止める。
そういえば、全身を炎に包んでいるはずの彼が踏んでいる絨毯には、焦げひとつできていない。
にわかには信じられぬ面持ちで、そっと亮に尋ねる一眞。
「熱く、ないの? 苦しくないの?」
「ああそうだよ! こんな姿になってもなんともないんだ!! どう考えても変だろ!? これじゃまるでっ……!!!!」
――――バケモノみたいだ
そう口にしようと顔を上げたその時、亮の赤みがかった揺れる視界に予想外の光景が飛び込んできた。




