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(なんで……!? 竜巻が起こる条件なんて揃ってなかったのに!)
一眞の頭は竜巻同様、ぐるぐると渦を巻いていた。疑問、焦り、そして恐怖。
それを嗅ぎつけたかのように、それはじわじわとこちらに迫ってくる。
止める術は見つからない。
家族はみんな出かけているし助けを求められる大人も近くにいない。
彼にできるのは、懇願することぐらいだった。
「止まれ……止まれよ!!」
ぴたりと、今まであたりを取り巻いていた突風が消える。
不審に思い恐る恐る顔をあげると、まるで彼の次の言葉を待つように動きを止めた竜巻が目に入った。
見つめる一眞。
対峙する竜巻。
「……え?」
彼の頭を一つの可能性がよぎる。
もしかしたら。
半信半疑ながらも、彼はそれに賭けた。
「……小さくなれ」
みるみるうちに渦は萎み、ちょこんと芝生の上で控えめに渦巻き続けた。
可能性は確信へと変わる。
彼は片手を、屋根の上からかざすように伸ばした。
「消えろ…」
その言葉と共に一眞の身体はかっと熱を持ち、そして渦は彼の片手へと吸い込まれていく。
信じられぬ思いで自分の手を見つめる一眞。
「今のは…」
ーーーービイイイイッ!!
放心しかけていた彼の意識を、けたたましいチャイムの音が引き戻した。
(もしかして、あれに気づいた近所の人が……?)
急いで室内に戻り、窓を閉める。
玄関に向かう階段の途中で大きく深呼吸をした。平常心を取り戻さねばならない。
自分の表情がいつも通りに見えることを祈りながら、彼は玄関の扉を開けた。




