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爽やかな陽光が窓から差し込む昼下がり、亮はベットの上で漫画を広げながら膨れっ面をしていた。
元々くしゃっとした髪の毛が、寝癖でよりひどいことになっている。
「ほんとに置いてくことないじゃんよ……ったく……」
恨めしそうに、彼は窓の外を見遣った。
昨日の雷雨が嘘のようにすっきりと晴れ渡った青い空。家の中にこもっているのは勿体ないほとだ。
昨夜、いつもより早く帰ってきた亮の父親が、明日から休みがとれたから隣の州に新しく来ている移動遊園地に家族で行こうと提案してきた。
移動遊園地とは、その名の通り移動式の遊園地。メキシコでは有名で、行事の時期になると現地の学校の校庭などを中心に廻っていく。移動式なだけあってアトラクションはほとんどが簡易的なものしかなく、安全性も日本では絶対に許されないほどのグレーゾーンだが、不思議と子供から大人までが楽しめる雰囲気があり亮もそれをいたく気に入っていた。
次の日の朝早くに出ることになり、それを楽しみに昨夜は自室へ戻った。しかし。
いつものようについつい漫画を夜遅くまで読み耽ってしまい、結局寝たのは夜明け前。
出発の時間までに起きることができなかったのだ。
もちろん彼の母親は何度も起こしに行った。
だが何度言っても叩いても起きない息子に呆れ、亮の事をおいて彼の妹と父親とともに出かけてしまったのである。
(いや、俺が悪いんだけどさあ……)
頭の中で少し反省しつつも拗ねたくなる気持ちを抑えきれず、亮の唇は鳥の嘴のように尖っていた。
「くそ、あてつけみたいに晴れやがって」
何の罪もない天気に八つ当たりをし、こうなったら家から一歩も出ないでいてやると変な意地を張って彼は乱暴にベットへ横たわった。
漫画を読み始めるが昨夜の寝不足がたたり、文字を追うごとに瞼は徐々に閉じていく。
うつらうつらと眠りにつく直前、異変は起こった。
――暑い…………
彼が最初に感じたのは、真夏のような暑さだった。中南米に位置するメキシコとはいえ、まだ5月である。
おかしいな、と思いつつも起き上がる面倒くささの方が勝り、亮は瞼を開けぬまま気にせず眠ろうとした。
しかしそれから一分もたたぬ間に暑さはぐんぐんと増していき、喉が張り付いたように息をすることすら苦しくなる。
耐え切れず、亮は水を飲もうと洗面所へと向かった。ガラホン水(※飲料水。メキシコでは生水が飲めず、ポリ瓶に水を詰めて売られている)をコップいっぱいに注ぎ、ガブリとあおる。一杯では足りず再度コップに水を灌ぐが、水の溜まるまでがもどかしくとうとう顔をガラホンの下へ持っていき、直接口に流し込んだ。
(熱でも出たのか?でも、そんなレベルじゃ……)
いくら水を飲んでも治まらない、渇きと暑さ。否、熱さ。
喉が、食道が、肺が、真っ赤に焼けた石炭をいくつも飲み込まされたかのような熱さに蹂躙される。




