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0の刻印【第一部・すべての始り】  作者: やまかわ まよ
第3話【十字の刻印】
27/76

3-7

◇◇◇


「ふう…」


満足気に息を吐きつつ、家に帰ってきた琴子はリビングのソファに寝転がった。


「ほら、そんなとこで寝ないの!眠いならさっさとお風呂入っちゃいなさい」


母親の叱声にしぶしぶ一度脱力させた身体を持ち上げ、彼女は二階の自室へと向かう。

階段を上りきったところで、ノートパソコンと何やら書類を抱えている父親と出くわした。


「仕事するの?」


「ああ。早く寝ろよ」


いつものことながらそっけなく感じる返事を返し階段を降りていく父親の姿を、ちくりと疼くような胸の痛みと共に見送る琴子。

それを振り払うように、彼女は自室のドアに手をかけた。

少しだけ、と言い訳をしながらベッドに再度寝転がる。

快気祝いだと父親に連れて行ってもらったレストランのステーキの味が、まだほのかに息にのこっていた。


(久しぶりにちゃんと話せると思ってたんだけどな…)


仕事が忙しく休日もあまりない父がわざわざ休みを取ってくれていたことは、彼女にとっては頬が緩むほどの嬉しい驚きであった。

なぜだかはわからないが、中学に上がったあたりから父はあまり琴子と話さなくなり、それから今までずっとそんな状態が続いている。

息子の大和に対してはそんなことはなく、それが一層琴子に寂しさを感じさせた。

だからこそ父親が家にいてくれていたことが嬉しかったのだが、かと言って特別話をできたわけではなく、ぶっきらぼうで無口な父の様子はほとんど変わらずに今日1日が終わろうとしていた。


「琴子!! 早く入りなさいって言ってるでしょ!」


階下から母親の大きな声が聞こえ、琴子は慌てて跳ね起きた。

無造作にパジャマを掴みお風呂場に向かう。

母親がお湯を溜めておいてくれたらしく、バスルームのドアを開けるとモワッと温かい空気が彼女の顔を包んだ。

服を脱ぎ、カーテンを開けて湯船に足を入れる。

琴子はいつもより少し熱めに設定したシャワーを頭から浴びた。

少し肌を刺す熱さが疲れを取ってくれるような気がして、気持ちが良かった。

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