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0の刻印【第一部・すべての始り】  作者: やまかわ まよ
第3話【十字の刻印】
22/76

3-2

(夢だったのかな、あれ)


琴子はぼうっと自分の両手を見つめた。

永谷から話を聞いたと言っていた母には、何かを隠しているような素振りも深刻な雰囲気もなかった。

夢だったのかもしれない。

自分にしか見えない入り口も、いきなり現れた大男を変な力で吹っ飛ばしたことも、なんの道具もない中切断された藤の左腕を元どおりにしたのも。


そう思ったほうが納得がいってしまうほど、現実的に説明のつかないことが起こりすぎている。

考え込みながら琴子は脚を曲げた。すると、ずくりと両膝に篭ったような痛みを感じる。

病院着を膝まで捲り上げると、そこには痛々しい二つの痣があった。

学校の廊下で粉塵に足を滑らせ、そこで膝を打ちつけたことを彼女は思い出した。

余程強くぶつけたのだろう。青黒く変色した箇所は、暫くは消えそうになかった。

スカートは当分履かないほうがいいな。そう思った矢先、ある考えが頭を掠める。


(藤先生の腕を治した記憶が本当だとしたら…)


この怪我も、自分で治せてしまうのだろうか。

患部に手を当てて念じてみればいい。簡単な話だ。

そうすれば、記憶が間違っていたことを証明できる。現実的に考えてあり得るわけがないのだから。


でも、万に一つの確率で、成功してしまったら?

異変が本当だったことを目の当たりにした自分は、ひとり恐怖に押しつぶされずに居られるだろうか。

おそるおそる、琴子は手を右膝へと伸ばす。

じわりと掌に汗が滲むのがわかった。

その時。


トントン、とドアを叩く音がした。

はっと我に返った彼女は毛布を元に戻しながら返事をする。

扉の開く音とともに、亮が顔を覗かせた。


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