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0の刻印【第一部・すべての始り】  作者: やまかわ まよ
第2話【私以外に、誰が】
18/76

2-11

「…!おお…白井……無事だったか……よかった……怪我は……してないか…………?」



自らが死の淵に追いやられているというのに、生徒の身を案じ続ける藤。

そのあまりにも痛ましい姿に耐え切れず、琴子は瞬きとともに涙を零した。



「先生……」


「みんなを逃がして……一人で闘ってくれたんだってなあ…ありがとうなあ……」



ふつふつと、怒りが琴子の中で湧き起こる。


(死なせない……こんなすばらしい先生が、こんな理不尽な死に方をして良いわけがない……!!)



じわりと、熱い何かが彼女の胸の辺りで広がるのを感じた。

閉じた目の奥で、今度はぽぅっとあたたかな光が灯る。


(お願い。力を貸して)


思いに応えるように、琴子の全身にその熱が巡っていく。

そっと開いたその瞳には、淡いオレンジ色の光。

彼女は深呼吸をひとつして、前を向いたまま隣にいた響に声をかけた。


「ねえ、先生の腕は?」


「え?」


突然の言葉に彼は目を見開いて琴子を見つめる。


「腕をね、持ってきてほしいの。お願い」


さらなる言葉に一層まじまじと彼女を見つめた響だったが、その表情にすぐに開いた口を閉じ、小さく頷いて頼まれたものを取りに走った。


「ありがとう……」


腕を受け取った琴子は、穏やかな顔で微笑む。

両手の上にずしりとした重みを感じながら、彼女は恩師の傍に膝をついた。


「し……らい……?」


焦点の合わない藤の瞳を覗き込み、力なく横たわっている右手を握る琴子。


「先生、もう話さないで……。私が先生を助けます。もしかしたら凄まじい苦痛かもしれない……だけど、先生を失いたくないの。だから……」


微かに、握っている手に力が入った

琴子はそれを了承の意と感じ、ありがとうございます、と彼の右手を自らの額につける。

そして毛布に包まれた左腕を抱え、藤の左側へと移動した。


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