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「うあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!」
一瞬の間を置き、藤の絶叫が学校中に響き渡る。
それを皮切りに始まる、パニックの連鎖。
幾多の悲鳴が、校内にこだまする。
「なんだよあれ……! なんだよあいつ!」
「フジセンの腕が!」
足の力ががくんと抜け、琴子はその場にへたり込んだ。
(逃げなきゃ、逃げなきゃ……!)
ずるずると窓からその身を引き離そうとする琴子。
全身が恐怖に侵食されていく。
自身をひきずりながら、その場にいる唯一の頼れる大人に助けを求めようと彼女は首を動かした。
しかし、視界に入った永谷の顔は、これまでにないほどの驚愕と絶望に満ちていて。
「まさか…まさかあいつが…!?だとしたらなんでここに…!!」
――――――キイイイィィィィィィィィィイインッ!!
耳が痛くなるほどの高音が、突如全員の鼓膜をついた。
「っ!! やべえっ! みんな伏せろ!!!」
何かに気が付いた永谷が声を上げ、そのまま琴子を抱きかかえ自身を覆いかぶせる。
刹那。
すさまじい音を立てて窓ガラスが破れ、ガラガラと崩れていくドアや、壁。
粉塵の舞う中目を凝らして琴子が見たものは、向こう側の壁に突き刺さった何本ものナイフだった。




