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ACT 7.転校生は黒田茜

 チャイムが鳴る。

 教室に教師が入ってきて、ホームルームが始まった。

 教師によると、転校生がいるとのことだ。

 転校生が入ってくる。

 黒田(くろだ) 茜(あかね)だった。

「東京の高校から来ました、黒田 茜です」

(あら?)

 茜が京子に気付く。

「伊丹さんと同じクラスなのね」

「何だ、伊丹と黒田は知り合いか。それじゃあ、黒田は伊丹の隣へ行け」

 茜が京子の隣に着く。

「よろしくね」

「よろしく」

 ホームルームが終わり、教師が出て行く。

 ……

 …………

 ………………

 放課後、京子は帰宅し、着替えてトレノで冬名へ向かった。

 冬名峠の頂上には茜のレビンが止まっていた。

「黒田さん」

「伊丹さん、あなたに負けてから、私ここで練習をしたのよ。リベンジさせてくれる?」

「いいわよ」

「じゃあ決まりね」

 茜がレビンに乗り込んで位置に着く。

 トレノもスタート地点に着き、両者は発車した。

 二台が並んでコーナーをクリアする。

 お次は緩い右コーナー。

 減速するレビンだがトレノはそのまま突っ込む。

(減速しない!? バカじゃないの!?)

 驚き戸惑う茜をよそに、トレノは次のきつい左コーナーを慣性ドリフトで抜けていく。

(慣性ドリフト!?)

 目を疑う茜。

 あっという間にトレノとレビンの差が開く。

(ふざけないで!)

 速度を上げるレビン。

 やがて五連ヘアピンに差し掛かり、やっとの思いでトレノに張り付くレビン。

 トレノは側溝にタイヤを引っ掛け、コーナーを曲がっていく。

 レビンも真似して溝落としを行う。

 京子はバックミラーを見て戸惑った。

(そんなことって!?)

 レビンが隙を突いてトレノを追い抜く。

「上等じゃない!」

 レビンを追いかけるトレノ。

 レースは終盤に近付き、ゴールはもう目前。

(速い! もう後がない!)

 京子は思い出す。

(前にお父さんが言ってたもう一つの溝走り。まだ試したことはないけど、一か八かやってみるか。立ち上がり重視の溝走り)

 京子のトレノのタイヤが側溝に引っかかる。それは普段の溝落としとタイミングが違った。

 コーナー中盤でタイヤを溝に落とし、終盤で飛び出す。

 立ち上がり重視の溝走りで、トレノはレビンの真横に移動する。

(何をしたの!?)

 驚き戸惑う茜をよそに、イン側についたトレノがコーナーを曲がってレビンを抜いていく。

 二台がゴールを過ぎたところで止まった。

「また私の勝ちね」

「悔しいけど負けを認めるわ」

 握手をする京子と茜。

「さっき何をやったの?」

「立ち上がり重視の溝走りのこと?」

「それ何?」

「あなたが私の真似をして溝走りをしたでしょ? その溝落としとは落とすタイミングも飛び出すタイミングも違ってね」

「そうなんだ。今日は楽しかったわ」

 茜はレビンに乗り去っていった。


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