ACT 1.究極のドリフト
一台の車が100Kmを超えるスピードで冬名峠のダウンヒルを走行していた。車種は白黒のAE86トレノ。
そのトレノがコーナー直前で減速し、ドリフトを決める。
フロント部分をガードレールギリギリまで寄せ付けて鮮やかにコーナーを抜けていく。
いくつかコーナーを抜けると、一台の車が見えてきた。
同じように下りを攻めているその車、黒のRX-7 FD3Sの後ろにトレノが張り付く。
FDのドライバーはバックミラー越しに車の存在を確認する。
(一台来やがった)
FDの速度を上げるドライバー。
(車種は何だ?)
緩い右コーナー直前でトレノがFDの横につける。
(ハ……ハチロクだと!? ふざけんな!)
FDが減速を始める。トレノはそのまま緩い右コーナーへ突っ込んでいく。その出口の先にはきつい左コーナーが待っている。
(きついコーナーなのに減速しねえ!? 何考えてんだ! やつは先を知らないのか!?)
トレノは右コーナーをクリアするが──。
(ほら見ろ。立て直して減速するスペースはねえ!)
だが次の左コーナーを減速もせずドリフトで抜けていく。
(慣性ドリフト!?)
FDはコーナーを抜けた先で止まり、ドライバーが降りてきた。
「俺は冬名で死んだ走り屋の幽霊でも見たのか……?」
一方のトレノは麓まで下り、そのまま帰路に就く。
群馬県の某所にある高校。
伊丹 京子は登校した。
「京子、おはよう」
そう挨拶してきたのは、京子の幼馴染みの男子、原田 啓太郎。
「おはよう、啓太郎」
「俺さ、今教習所通ってんだけど、免許取ったらハチロクを買おうと思う。京子は免許取らないの?」
京子は免許証を取り出した。
「マジかよ」
「うん。ハチロクって何?」
「ハチロクってのは、トヨタが開発した車だよ」
「うちにもトヨタ車あるよ。古いけど」
「そんなもん比べ物になんねえよ! お前も免許持ってんなら一緒にハチロク買おうぜ?」
「大体、そんな車買ってどうすんのよ?」
「決まってんだろ。峠を攻めるんだよ!」
「面白いの? 私そう言うの飽きてんだよね」
「はあ? どういう意味だよ……」
「それより、急がないとチャイム鳴るよ?」
啓太郎が腕時計を見る。
「うわああああ! 急げ!」
二人は教室へと急いだ。
峠のクイーンを読んでいただきありがとうございます。
この作品は頭文字Dを見てたらアイディアが生まれて書きたくなった作品でございます。
冒頭のハチロクは誰が運転してるんでしょうね。