惑星コーズ 執政官執務室
「国民の不満はかなりのところまで高まっています」
惑星コーズ地上軍司令官であり副執政官のクリュチコフは現状を確認するように言うと、目の前に座る惑星執政官の思案顔を見つめた。
執政官が28年前に初めてこの地位に就任する前からの友人同士だった2人は惑星の財政問題にも二人三脚で取り組んできた。
「このままでは国民の生活が維持できない、ここで取れるのは鉱物と食料だけだ。」
そう呟く執政官はこの数年で一気に老け込み、今では私と同い年とは全く思えない・・・
クリュチコフは親友の憔悴しきった顔を哀しみを湛えた目で見つめながらこうなった経緯に思いを巡らせていた。
(元はといえば宇宙軍が鋼材の支払いを先延ばしにしている上に財政支援を拒否しなければこんな事態にならなかったものを・・・この星に恨みでもあるのか、でなければ余程政府も財政が逼迫しているかか・・・)
「・・・チコフ」
いつの間にか深く考え込んでいたのだろう、何度も自分を呼ぶ声に思考を中断されたクリュチコフははっとした顔で執政官の目を見返した。
深く考え込んでいたのだろう彼を見つめる執政官は、クリュチコフの注意が完全に自分に向けられたのを確認したかのように決然とした表情で言った
「地球へ直接向かう。お前はここに残って後を頼む」
致し方ないだろう・・・クリュチコフは一度閉じた目をゆっくり開けると、ゆっくりと頷いた。
「分かりました。軍は暴動が起こった際はできるだけ鎮圧を避けさせ、現状が切羽詰まっていることを宣伝します。」
「軍は意思を持ってはいけないというが・・・今回は仕方ないだろう」
執政官は椅子から立ち上がると、親友と無言で頷きあった




