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スルムは姿を消した幼馴染ジョー・シミズのことをずっと考えていた。跡形も残らないほど燃え尽きたのか、あるいは何処かに攫われてしまったか。
あの時自分もシェルター地下一階の方に残っていれば、なにか変わったんじゃないか、というのをいつも考える。
ストレスがあって食欲がない。
そのせいで痩せるし、魔人族に復讐するための騎士団第八支部に入ったので、鍛えてしまって、もしジョーが今の自分を見てもわからないだろうと思う。
どうやら自分はそれなりに「人気」があるらしい。〝雪狼〟という二つ名がつく程度にはそれなりに名も上げた。
だからどうということはなく、見られたかった人には一切見られていないのだから意味がない。
ジョーは昔から優しかった。常に笑顔でいて、友人がいけないことをしていれば、「それはいけない」としっかりと言う人間だった。
そういう彼の筋の通ったところに憧れていた。
ある時、本部に行くことになった。
本当は行きたくなかった。その日はジョーの誕生日だったから。毎年ジョーの誕生日は静かに祝っていた。
写真に向かって、机に向かって。
「レイン・マラガス騎士団長様! こちら最近名を上げてきているケイです! 連れてきちゃった」
「ホォ、君が」
「スルム・ケイです。シェネモ村の生まれです」
「シェネモ村。あっ。シェネモ村」
「なにか?」
「いや、なんでもないよ。では、ケイ。君は明後日から本部預かりになる訳だけれど、何らかの質問があればいまのうちに」
「行方不明になった幼馴染を探しています。てがかりはありませんか。赤髪で、赤い瞳をしています」
「ホォ、幼馴染」
レインは目を細める。
「なにか‥‥‥?」
「情熱的だね。見つけてどうなる。生きていたら再会を喜べるだろうが、死んでいたら?」
「死んでいると?」
「しんでいたら?」
「‥‥‥それは‥‥‥」
「いじめてすまないね。私は第六感が優れているので、人の感情を読むのが優れてしまってあるんだ。色恋で動かれて困るのは我々でなく、戦う力を持たない一般市民だよ、ケイ」
「‥‥‥‥‥‥」
「どうする?」
「死んでいたら、ようやく花をあげられる」
「生きていれば」
「その時は、多分、嬉しく思うと、思います」
レインは笑みを浮かべた。
ところかわって街に出ていたジョーとオーザムは装飾屋の少女に髪をいじられていた。
「クロのお兄ちゃん髪の毛真っ白で雪みたいだから、青い雪の結晶の髪飾り! ネズミのお兄ちゃんは薔薇の髪飾り」
「似合ってるかい? ありがとう、アンナちゃんはセンスいい」
「ヤ、ほんとほんと! 俺、薔薇なんてつけたのはじめてだ。ありがとうなぁ、アンナちゃん!」
「えへへ」
アンナと呼ばれた少女は照れ臭そうに頭の後ろを撫でた。
「でも、なんでクロのお兄ちゃんは真っ白なのに〝くろいいとつかい〟って呼ばれてるの?」
「俺はスキルを使うと髪の毛とか着ているものとかが黒くなるんだ。すると、黒い糸使いだろう?」
「見たい見たい!」
「はは、いいよ。猫噛み、人形あるかい?」
「へいへい」
オーザムはいつも持ち歩いている「子供をあやすためのぬいぐるみ」を取り出した。腕輪に着けているスプールの安全装置を外し、〈糸使い〉を発動させた。能力を鍛えていく内に、魔力が頭髪や身につけているものを黒く染めるようになった。
白いシャツが黒く染まっていく。
糸をぬいぐるみに挿し込んで指をチョイチョイと動かしていると、まるで意思を持っているように踊る。
アンナは喜んで目を輝かせた。
「いやあ、アニキのスキルいいね。あんなふうに子供を笑顔にできるいい能力だ」
「‥‥‥。俺はこれを、命を奪うのに使うよ」
「なんで褒めた矢先にそれを言うんだバカタレ」




