第27章 地下の実験と譲渡された手柄
■某所・地下収容施設
薄暗く、カビ臭い独房。
コンクリートの床に直置きされた薄汚いベッドの上で、氷川智宏は目を覚ました。
「……ん、あ? ……いてて」
氷川はのっそりと起き上がり、首を振った。
顎に鈍い痛みが残っている。記憶の糸を手繰り寄せる。
洋館のロビー。氷漬けの空間。そして、姿の見えない音無賢人からの、強烈なアッパーカット。
「……クソが」
氷川は壁を殴りつけた。
「あのガキ……! 次に会ったらタダじゃおかねぇ」
氷川はギリギリと歯軋りをした。
(俺は舐めてた。あいつが『見えない』だけじゃなく、殴りかかってくるなんて想定外だった。
……次は捕獲なんて温いことはしねぇ。死なない程度に手足を凍らせて粉砕し、達磨にしてから裏ルートで売り飛ばしてやる)
ドス黒い復讐計画を練っていると、重厚な電子ロックが解除される音が響き、鉄扉が開いた。
入ってきたのは、軍服姿の男——グレイ司令官だ。
「……やあ。目覚めはいかがかな? ミスター・アイスマン」
「最悪だねぇ……」
氷川はベッドに胡座をかき、不機嫌そうに吐き捨てた。
「空気は悪いし、ベッドは汚いし、飯の匂いもしねぇ。
……っていうか、ここはどこだい? 日本の留置場じゃなさそうだけど」
グレイは無表情のまま、短く答えた。
「アメリカだよ」
「……は?」
氷川は一瞬きょとんとしたが、すぐに腹を抱えて笑い出した。
「ハハハ! マジかぁ〜! いきなり海外旅行かよ!
じゃあ今度は、アメリカでひと暴れするかぁ!」
氷川は立ち上がり、グレイに詰め寄った。
「おいオッサン。とりあえずここから出してくれよ?
そしたら、アンタの命だけは助けてやるよ。俺は寛大だからな」
「断る。それは出来ない」
グレイは冷徹に告げた。
「順番待ちだ。……大人しく待っていろ」
「あぁ?」
氷川の目から笑意が消えた。
「順番待ちだぁ? ……テメェ、立場が分かってねぇようだな」
氷川は気味悪く口元を歪めた。
「素直に従っとけばいいものを……。後悔すんなよ?」
氷川は右手を突き出した。
イメージするのは、絶対零度の氷槍。グレイの四肢を串刺しにする未来。
「——『氷』!!」
…………。
「……あれ?」
氷川の手からは、冷気どころか、そよ風一つ吹かなかった。
ただ、湿っぽい独房の空気が漂うだけ。
「おいおい、寝起きで調子が悪いのか?」
氷川は何度も手を振った。
「凍れ! 出ろ! ……オラッ! 『氷』!!」
何も起きない。
指先が冷たくなる感覚すらない。ただの生身の人間の手だ。
「な、なんでだ……!?」
次第に焦りが全身を支配する。氷川はグレイに掴みかかろうとした。
「テメェ!! 何しやがった!! 俺に何の薬を打ちやがった!!」
グレイは動じることなく、氷川の手を払いのけた。
「何もしていないよ」
「はぁ!? じゃあなんで出ねぇんだよ!」
「……興味深いデータだ」
グレイは顎を撫でながら、観察するように言った。
「日本では、呼吸するように使えていた能力が……『ココ』では使えないみたいだね」
「ココだと……?」
「場所の問題か、距離の問題か、あるいは言語環境か……。
ただ、一概には言えない。色々な状況、条件を試してみないとデータが取れないからね」
グレイは冷酷に微笑んだ。
「だから……ちょっと実験に付き合ってもらうよ」
「じっ、けん……?」
その時、グレイの後ろのドアが再び開いた。
軍医のような白衣を着た大男たちが、ストレッチャーを押して入ってくる。
その上には——ボロボロになった肉塊のような男が乗せられていた。
「あ……あ……」
包帯と拘束具でぐるぐる巻きにされたその男は、焦点の合わない目で氷川を見た。
「あ……ニキ……」
「か、金子……ちゃん?」
金子だった。
だが、その姿は見る影もない。手足は不自然な方向に曲がり、皮膚は変色している。
ただ生きているだけの物体。
「た、すけ……て……。いたい……」
金子は涙を流して懇願するが、指一本動かせないようだった。
何かの実験を施された後の姿であることは、誰の目にも明らかだった。
氷川の背筋に、経験したことのない悪寒が走った。冷や汗が止まらない。
「……ひ、ッ」
「さあ、氷川君」
グレイが氷川の肩に手を置いた。
「前の被験体が壊れてしまったからね。熊井も金剛寺も使い物にならなくなってしまった。さぁ……君の順番が回ってきたよ」
「ま、待て……」
「外に出ようか。……科学の進歩のために」
グレイが合図をすると、金子を運んできた屈強な男たちが、今度は氷川の両腕をガシッと掴んだ。
「いやだ……! おい、やめろ!」
氷川は必死に抵抗した。だが、能力のない彼はただの細身の男だ。軍人の力には敵わない。
「離せ! 離せって! なんだよこれ! 俺は客だろ!?」
ズルズルと引きずられていく。
金子の虚ろな目とすれ違う。
「やめろぉぉぉぉぉ!!! 助けてくれぇぇぇぇ!!」
絶叫が廊下に響き渡り、やがて重い鉄扉の向こうへと消えていった。
再び静寂が戻った独房。
グレイは一人残り、氷川が引きずられていった扉を見つめていた。
「……やはり、本土では能力の発現が阻害されるか、あるいは消失するのか」
グレイは手元の端末にデータを打ち込んだ。
「『漢字』という概念がトリガーだとすれば、この地にはその概念が希薄だからか?
それとも、日本という土地そのものに特異性があるのか……」
グレイの瞳には、人間への慈悲など欠片もなかった。あるのは、未知への探究心と、力を支配しようとする欲望だけ。
「徹底的に解明してやる……そしていずれは…」
グレイは冷ややかに呟くと、足早に実験室へと向かった。
アメリカの地下深くで、誰にも知られない悲劇が幕を開けていた。
■洋館・食堂(作戦会議)
朝食後のコーヒーの香りが漂う中、東義昭が放った一言は、その場の空気を瞬時に凍りつかせた。
「……なお、以前作成した『要注意覚醒者リスト』だが。あのデータは全て、警察庁と防衛省の幹部に譲渡した」
カチャン。
誰かがスプーンを落とす音が響いた。
数秒の沈黙の後、どよめきが爆発する。
「はぁぁっ!? 正気ですか先生!?」
髙橋俊明が椅子を蹴倒さんばかりの勢いで立ち上がった。
「あれは我々の生命線ですよ!? 何処に誰がいて、どんな能力を持っているか……あの『地図』がないと、我々も暗闇を手探りで歩くようなものです!」
「そうだ! この先どうやって実績を積めって言うんだよ!」
鈴木浩三も頭を抱えて天を仰いだ。
「苦労して集めた宝の地図を、みすみすライバルにくれてやるなんて……ボケちまったのか?」
「騒ぐな。……これは必要な『撒き餌』だ」
東はカップを置き、冷徹な眼差しで全員を制した。
「先日の一件……警察署襲撃と、今回の我々の秘密裏の解決劇。これを面白く思わない連中がいる」
東は眼鏡を外し、レンズを拭きながら語った。
「警察庁と防衛省の幹部連中だ。『どこの馬の骨とも知れぬ東の私兵ごときに、デカイ顔をされては困る』『治安維持は我々の領分だ』とな。
昨日、私の事務所の高柳に対して、陰湿な圧力をかけてきたらしい」
「……なるほど。組織の面子ってやつか」
谷雄一が苦々しく吐き捨てた。
「現場の苦労も知らねぇキャリア組が、手柄だけは欲しがる。よくある話だ」
「そこで私は提案した」
東は口角を吊り上げた。
「『ならば、この手の事件は今後、警察と自衛隊が主導で動き、我々はその“おこぼれ”を貰う下請けとして協力する。
そのようにマスコミに報道させるなら……このリストを提供しよう』とな」
「……それで?」
「奴ら、満面の笑みで帰っていったらしいぞ? 『これで主導権は我々のものだ』と喜んでな」
「……そりゃそうでしょうよ」
谷は呆れ半分、納得半分で苦笑いしながら肩をすくめた。
「リスト(情報)を貰って、今後あんたらがメインで頑張ってくれって後押しされて、メディアにも『警察主導』って公表されるんだ。
面子は保たれたし、世間からの追い風も吹く。……癪ですが、政治的にはWin-Winの取引に見えますね」
「……いや、違うな」
東は首を横に振った。その瞳には、冷徹な策士の色が宿っていた。
「あいつらは……**『面子を保つために、自ら地雷原に飛び込んだ』**ことに気づいていない」
「え?」
東は手元のタブレットを操作し、ニュース画面をモニターに映し出した。
『速報:空き巣犯「風間」、護送中のパトカーから逃走』
「見てみろ。……これが現実だ」
全員が息を呑む。
「風間が……早くも脱走した!?」
髙橋が絶句する。
「あれだけ苦労して捕まえたのに……!」
「考えてもみろ。空を飛び、隙間を抜ける覚醒者を相手に、今の警察や自衛隊の装備でどうにかなると思うか?」
東は断言した。
「無理だ。どうせ何も出来やしない。
あいつらに、あの手の覚醒者を留めておける施設などない。……もちろん、今の我々にもだ」
東は冷酷に続けた。
「リストを渡したことで、奴らは『情報を知っているのに捕まえられない無能』になる。
メディアに公表して大々的に捜査本部を立てれば立てるほど……成果が出ない警察や自衛隊の株は暴落する」
東は指を一本立てた。
「そこでだ。……谷君、音無君、サラ君、アレックス君」
「はい!」
「Here.」
「君たち四人の『目』と『耳』と『技術』で、街の中を探知し、監視カメラの映像を解析しろ。
**『世間に公表されていない、リスト外の未知なる覚醒者犯罪』**を突き止め、我々の手で確保するんだ」
「リスト外を……ですか?」
「ああ。そして、それをメディアに公開しろ。
『対策局が独自の捜査で凶悪犯を確保した』と大々的に流す。
そしてそのあとは……」
東は悪魔的に微笑んだ。
「……捕まえた身柄を、警察か自衛隊に**『譲渡』**してやれ」
「……っ!」
白川真純がハッとして声を上げた。
「なるほど……! 確保するのは我々で、手柄の一部をあえて譲る。『身柄を警察に引き渡した』という事実までメディアに流すんですね?」
「その通りだ」
東は両手を広げた。
「『対策局は捕まえたのに、警察がまた逃がした』
『自衛隊が出動したのに、被害が拡大した』
……その事実が積み重なれば、世論はどう動く?」
「……『既存の組織じゃ無理だ』。『覚醒者を確実に収容できる施設を作れ』。『専門家(対策局)に全権を任せろ』という声が上がりますね」
サラが感嘆のため息をついた。
「Exactly(その通り)。そこで、今私が通そうとしている新法……『特定覚醒者収容施設設置法』の必要性が証明されるという訳だ」
「Wow... It's devilish(まるで悪魔的ね)」
サラは呆れたように、しかし楽しげに笑った。
「自分たちだけ『有能さ』をアピールして、相手には『無能』を演じてもらうなんて。しかもそれを、相手から望んでくるなんて笑っちゃうわ」
「フン。最高のショーになるだろう」
東は表情を引き締めた。
「ただし……これは我々が『リスト無し』で、警察より早く覚醒者を捕まえられるという前提だ。
だからこそ、索敵の得意な君たち四人にかかるウェイトは大きいぞ」
東は次々と指示を飛ばす。
「髙橋君は現場への緊急展開(転移)。鈴木君は犯人の無力化。白川君は犯人の自供とプロファイリング。
……それぞれの得意分野を活かせ。失敗すれば、我々も『口だけ集団』の烙印を押される。頼んだぞ!」
東の檄に、全員が背筋を伸ばした。
巨大組織を出し抜き、実力で証明する戦い。やるしかない。
「「「了解!!」」」
全員の声が重なり、食堂に響き渡る。
「……ふわぁあ……」
その気合の入った掛け声に驚いたのか、部屋の隅で椅子を並べて死んだように寝ていた田治見薫が、ようやくのっそりと起き上がった。
「……うるせぇなぁ。朝っぱらから元気だねぇ……」
ボサボサの髪をかきむしり、眠い目をこすりながらあくびをする田治見。
その気の抜けた姿を見て、張り詰めていたメンバーたちの顔が少しだけ緩んだ。
「お早うございます、先生。二日酔いですか?」
「うっせ。……迎え酒だ」
最強のチームによる、新たな「狩り」と「政治戦」が、今始まろうとしていた。
■洋館・テラス
「……音無。準備はいいか?」
「はい。いつでもいけます」
谷雄一と音無賢人は、テラスに並んで座禅を組んでいた。
二人は同時に意識を集中させる。
「——『谷』、反響定位・広域モード」
「——『音』、増幅・同調」
キィィィン……。
賢人の能力が谷の聴覚神経に干渉し、その感度を爆発的に底上げする。
本来なら半径数キロが限界の谷の「耳」が、街の喧騒を越え、遠く離れた市街地の裏路地の音までをも鮮明に捉え始めた。
「……すげぇ。見える、音で街が見えるぞ」
谷が額に脂汗を浮かべながら唸る。
「……悲鳴です。3時の方向、距離8キロ」
賢人が冷静にサポートする。
「おう、聞こえた! ……コンビニだ。レジを蹴り飛ばす音、怒号!」
谷は即座にインカムを押さえた。
「サラ! 3時の方向、8キロ地点のコンビニだ! 強盗発生!」
■洋館・リビング(指令室)
「Roger!」
サラ・コッホがキーボードを叩き、指定エリアの防犯カメラ映像をモニターに呼び出す。
「……Hit. 見つけたわ」
画面には、ニット帽を被った男が、閉まった自動ドアを**「すり抜けて」**逃走する姿が映っていた。
「壁抜け(Phasing)ね。物質透過能力者よ」
サラは即座に座標を算出した。
「髙橋さん! 鈴木とアレックスを連れて、この路地の出口へ! 奴の逃走ルートよ!」
「了解! ……行きますよ二人とも!」
髙橋俊明が鈴木浩三とアレックス・ターナーの肩を掴む。
シュンッ!
■市街地・路地裏
空間が歪み、三人が路地裏に着地した。
その直後、ニット帽の男が猛スピードで走ってきた。
「どけぇぇぇ!!」
男は立ち塞がるアレックスを見て、ニヤリと笑った。
(馬鹿め! 俺はすり抜けられるんだよ!)
「Stop!(止まれ!)」
アレックスがタックルを仕掛ける。
スゥッ……
男の体が幽霊のように霞み、アレックスの屈強な肉体を何事もなくすり抜けた。
「なっ!?」
「ヒャハハ! 無駄無駄ぁ!」
男はそのまま、後方にいる鈴木と髙橋に向かって突っ込む。
(デカブツだろうが関係ねぇ! このまま突き抜けて……!)
だが、鈴木は慌てず騒がず、ポケットから愛用の鈴を取り出した。
「……通行止めだ」
チリリリリリリ…………
涼やかな音が路地に響く。
「あ?」
男が違和感を感じた時には、もう遅かった。
透過していたはずの肉体が、急激に質量と実体を取り戻す。
「え、あ、ぶっ!?」
ドスォォォン!!
男はブレーキをかけられず、実体化したまま鈴木の巨体に正面衝突した。
まるでコンクリートの壁に突っ込んだような衝撃。
「ぐべぇっ!!」
「よっと。……いっちょ上がりだな」
鈴木は跳ね返ってきた男の首根っこを掴み、軽々と地面に押さえつけた。
「髙橋さん、頼む!」
「はい!」
シュンッ!
髙橋が一度姿を消し、数秒後に白川真純を連れて戻ってきた。
「……状況は?」
白川が手帳を開く。
「確保完了。今、警察に通報したところだ」
アレックスがスマホの動画撮影モードを回しながら答える。
「放せ! 俺は壁抜けだぞ! なんで触れるんだよ!」
男が暴れるが、鈴木が鈴を鳴らし続けている限り、ただの一般人だ。
白川は男の前に屈み込み、事務的に尋問を開始した。
「名前は? 単独犯? 他に余罪は?」
「う、うるせぇ! 言わねぇよ!」
(——『白』)
「……嘘ですね。目が泳いでいます。単独じゃない、共犯者がいますね? 盗品の隠し場所は?」
白川は淡々と、嘘と真実を仕分けし、全てをメモに残していく。
その手際の良さに、男は顔面蒼白になっていく。
数分後、サイレンと共にパトカーが到着した。
降りてきた制服警官たちは、鈴木たちを見て怪訝な顔をしたが、白川を見て敬礼した。
「お疲れ様です、白川さん。……引き渡しですか?」
「ええ。調書に必要な情報はここにまとめてあります」
白川がメモを渡すと、警官はニヤリと笑った。
「助かりますよ。……しかし白川さん、今、警察の方が世論が傾いてるのご存知ですか?」
警官はテレビでの「警察主導」の報道を信じきっていた。
「怪しい自警団なんか辞めて、戻ってくりゃいいのに。今なら席ありますよ?」
白川は、冷ややかに微笑んだ。
「ご心配なく。……私は、ここ(対策局)でやることがありますから。遠慮します」
「……そうですか。ま、気が変わったら連絡待ってますよ」
警官たちは男をパトカーに押し込み、走り去っていった。
車が見えなくなるまで、鈴木は鈴を鳴らし続けていた。
「……行ったか」
鈴木が鈴をしまう。
「ああ。バッチリ撮れたぞ」
アレックスがスマホを掲げた。
「犯人の能力、鈴木さんによる無力化、そして警察への引き渡し……。我々が解決したという動かぬ証拠だ」
「完璧ですね。……戻りましょう」
髙橋が全員に触れる。
シュンッ!
■洋館・リビング
「ハッハッハッハッハ!!」
帰還したメンバーからの報告と、アレックスが撮影した動画を見て、東義昭は高笑いしていた。
「素晴らしい! ものの1時間で一件落着か!
しかも警察への引き渡しまで、完璧なアングルで記録されている!」
東は動画を再生し直し、悪魔的な笑みを浮かべた。
「見ろ、警官のこの余裕ぶった顔を。『警察が主導している』と信じ込んでいる無能な顔だ。
だが、真実はこの動画にある。捕まえたのは我々だ。
これを適切なタイミングでリークすれば……警察のメンツは丸潰れ、我々の株はストップ高だ」
東は立ち上がり、全員に檄を飛ばした。
「いいぞ、この調子だ!
音無君、谷君、次はどうだ? まだ獲物はいるか?」
音無がヘッドセットを押さえる。
「……はい。東地区で不審な爆発音。北地区では発火能力者の目撃情報。……山ほどいます」
「結構! 今日は稼ぎ時だぞ!」
東は目をぎらつかせた。
「片っ端から狩り尽くせ!
実績を積み上げろ! ……我々の正義を法にするためにな!」
「「「了解!!」」」
その日。
覚醒者特別犯罪対策局は、一日で8件もの覚醒者犯罪を解決し、警察に身柄を引き渡した。
街の影で暗躍する「謎の集団」の噂は、瞬く間に広がり始めていた。




