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巡り巡る 〜漢字の意味が世界を変える世界〜  作者: 暇な鍼灸師


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第17章 最強チームの自己紹介と最初の晩餐


◾︎洋館二階 食堂



「げっ、俺かよ!?」


鈴木浩三は嫌そうに立ち上がったが、東の冷ややかな視線に促され、諦めて口を開いた。


「……へいへい。

名前は鈴木すずき 浩三こうぞう

年齢は35歳だ。

仕事は猟師。山で罠かけたり、鉄砲撃ったりして生きてきた」


鈴木はポリポリと頭をかいた。


「…難しいことは分からんが、力仕事と、あと『鈴』を使った能力者の無力化なら任せろ。あと植物や木なんかも一気に成長させる事が出来るから野菜育てるの早いぜ。一応どっちも思考型だが範囲はすげぇ狭い。

好きな食い物は、猪鍋と焼酎。

嫌いな物は……窮屈なスーツと、人混みだ。以上!」


ドカッと座る鈴木に、サラが手を挙げる。


「質問! その『鈴』って、どんな原理なの? 魔法?」


「魔法じゃねぇよ。……なんていうか、音が響くと周りの空気が凪ぐんだよ。ま、理屈は知らん! 次!」


鈴木に指名され、髙橋俊明が恐縮しながら立ち上がった。


「あ、次は僕ですね。

名前は髙橋たかはし 俊明としあき

29歳です。

仕事は地質調査会社のサラリーマン……兼、今日からはここの出向社員ですね」


髙橋は眼鏡を押し上げた。


「貢献できることは、『橋』による『空間転移』で移動と搬送が得意です。物理型ではありますが人も物も、一瞬で運べます。あと、『髙』のおかげなのか高いところまで一気に転移出来ます。もともと高い所が平気なので高所作業も。

好きな物は……妻の作ったハンバーグと、娘が好きな甘口カレー。

嫌いな物は、サービス残業と、理不尽なクレームです」


「所帯持ちの鑑だな」と谷が茶化すと、髙橋は苦笑いで返した。


次は、その谷雄一の番だ。


彼は勢いよく椅子から立ち上がると、今までにないほど晴れやかな顔でジャケットの襟を正した。


「 次は俺だ!

名前はたに 雄一ゆういち、42歳。

昨日までは所轄の万年ヒラ刑事だったが……東先生のお力添えで、今日付で警視庁公安部・特別捜査官に出世した!」


谷はニカっと笑い、新しい身分証(警察手帳)を皆に見せびらかした。


「いやぁ、長かった! 泥にまみれて現場を這いずり回ってきた甲斐があったってもんだ。これからは公安様だ、給料も上がるし経費も落ちる!

貢献できるのは、『谷』を使った音の広域索敵と、現場に残った音を残響として聞く事が出来る!思考型だぜ!任せとけ!」


「……はしゃぎすぎですよ、谷さん」


隣の白川真純が、呆れ半分、緊張半分といった面持ちで立ち上がった。


白川しらかわ 真純ますみ、30歳です。

私も谷さんと同じく、今日付で公安部への異動辞令を頂きました」


白川は凛とした瞳で全員を見渡した。


「ですが、浮かれている場合ではありません。私たちに与えられた権限は強大ですが、それは責任の裏返しです。

私は……皆さんと共に、理不尽な暴力のない、より良い日本を作るために全力を尽くします。

貢献できることは、思考型による『白』の効果の『嘘発見』による尋問と、状況分析です。あと思考型の『川』による因果関係の理解と水の操作ですが、こちらはあまり得意ではないです。私に隠し事は通用しないと思ってください」


真面目な挨拶に、東が満足げに頷く。


「うむ。その意気だ、白川君。……谷君も、少しは見習いたまえ」


「へいへい、分かってますって」


続いて、サラ・コッホが軽やかに立ち上がった。


「Hi, guys!

名前はサラ・コッホ。年齢は24歳よ。

仕事は……元アメリカ軍の情報将校スパイ。今はここの特別顧問ね。

貢献できるのは、ハッキング、潜入、化学工作、あと可愛い笑顔かな?

好きな物は、お寿司と、日本のコンビニスイーツ!

嫌いな物は、元上司グレイと、退屈な男よ」


サラがウインクすると、音無がおずおずと手を挙げた。


「……質問。ハッキングって、どこまで出来るんですか?」


「んー? その気になれば、ペンタゴンのサーバーでお絵描きできるくらい? まあ、日本の監視カメラ網なら全部私の目よ」


「……味方でよかった」


サラの隣で、アレックス・ターナーが重々しく立ち上がる。


「アレックス・ターナー。30歳だ。

同じく元工作員だ。

貢献できるのは、あらゆる重火器の扱い、格闘、車両の運転。荒事なら任せてくれ。

好きな物は、静かな時間と、ブラックコーヒー。

嫌いな物は……意味のない殺しと、納豆だ」


「納豆かよ!」鈴木が突っ込む。


「あれは人の食べ物じゃない。……質問は?」


「ねぇな。アンタの腕っぷしは昨日見たから信用してるぜ」


鈴木が親指を立てると、アレックスも微かに口元を緩めた。


そして、全員の視線が音無賢人に集まった。


賢人は深呼吸をして、ゆっくりと立ち上がった。


「……音無おとなし 賢人けんとです。

年齢は20歳。

仕事は……コンビニバイトをしていましたが、今は無職です」


賢人は一度言葉を切り、全員を見渡した。


「チームへの貢献は……物理型の『無』と思考型の『音』を使った、誰にも気づかれない潜入と……敵の無力化です。あと遠くの音を聞いたり音を小さくしたり大きくしたり出来ます。

好きな物は……今は特にありませんが、昔は母の作った味噌汁が好きでした。

嫌いな物は、理不尽な暴力です」


静かな、しかし芯のある自己紹介に、髙橋が優しく声をかけた。


「質問というか、要望だけど。……今度、味噌汁作ってみようか? 俺も料理はするんだ」


「……! はい、ぜひ」


賢人の表情が、少しだけ明るく緩んだ。


最後は、一番端に座っていた少女だ。


幸田美咲は、おずおずと立ち上がった。ジャージの袖をギュッと握りしめている。


「あ、あの……。

**幸田こうだ 美咲みさき**です。18歳です。

仕事というか……高校を中退して、家にいました。

チームへの貢献は……私は戦うことはできません。でも、掃除や洗濯、家事全般で皆さんを支えたいと思います。精一杯、頑張ります」


美咲は顔を上げた。その瞳には、昨日の惨劇の記憶と、それを乗り越えようとする意志が混ざっていた。


「好きな物は、オムライスです。

嫌いな物は……寒い場所と、氷です」


その言葉に、一部のメンバーが幸田の家で起こった惨劇を思い出し、表情を引き締めた。


それゆえに恐らく覚醒者である彼女に能力を聞く事をためらった。


東が口を開く。


「……うむ。全員、把握した」


東は髙橋と白川に向き直った。


「情報は揃ったな。鈴木君のための肉、サラ君のための寿司、髙橋君のためのカレー、美咲君のためのオムライス……。後は当分の食料だな。

予算は潤沢だ。全員の『好きな物』を網羅してこい。今夜は英気を養う」


「はい!」

「了解しました!」


髙橋と白川が、メモを片手に立ち上がる。


「さあ、解散だ! 食事が来るまで、各自荷解きをしておけ!」


東の号令と共に、奇妙な連帯感が生まれた部屋から、メンバーたちが動き出した。


最強のチームの、最初の晩餐が始まろうとしていた。



■近所のスーパーマーケット 裏手



シュンッ!


大気の揺らぎと共に、路地裏に髙橋俊明と白川真純が姿を現した。


「……っ!?」


白川はよろめき、壁に手をついた。


「こ、これが転移……。ジェットコースターより心臓に悪いです……」


「あはは、最初はみんなそう言いますよ。深呼吸してください」


髙橋は慣れた様子で背中をさすり、すぐに店舗の入り口へ向かって歩き出した。


「さ、行きますよ白川さん。人数が多いから戦場です」


店内に入ると、髙橋は流れるような手つきでカートを引き抜き、カゴを二つ重ねてセットした。


「肉と野菜はこっち、惣菜はあっちです。効率よく回りましょう」


その手際の良さに、白川は目を丸くした。


「……髙橋さん、凄く手慣れてますね」


「週末はいつも家族の買い出し担当ですから。……あ、今日は特売日だ。ラッキー」


(流石、世帯持ちの常識人は違うなぁ……)


白川は感心しながら、この頼もしい「パパ」の後ろをついて行った。



■洋館 リビング



一方、留守番部隊のサラ・コッホは、東義昭を捕まえて深刻な顔で話し込んでいた。


「……Bossボス。はっきり言って、今のここの防衛力はザルよ」


サラは窓の外を指差した。


「森に囲まれてて死角が多いし、センサーもカメラもない。敵が本気で攻めてきたら、寝込みを襲われて終わりね」


「ふむ。……確かに」


東は腕を組んだ。


「今日と明日くらいなら、私とアレックスが交代で不寝番をするけど……毎日は御免よ? 美容に悪いわ」


「もっともだ。……アレックス君もちょっと来たまえ」


東は二人を呼び寄せると、メモ帳とペンをサラに渡した。


「飯が来るまでの間、ここの警備や装備で必要なものを書き出しておけ。監視カメラ、センサー、通信機器……必要なものは全てだ」


「あら、太っ腹。……どんなものでもいいの?」


サラが目を輝かせると、東は釘を刺した。


「実現可能な範囲でな? 戦車が欲しいとか言うなよ」


「分かってるわよ♪ えーと、まずは熱源感知センサーに、指向性マイク、それに軍用の暗号化サーバー……」


「おいおいサラ、ここを要塞にする気か?」


アレックスが苦笑するが、サラはウキウキしながらペンを走らせた。



■一階 廊下



「よっと……。こいつはここに置くか」


鈴木浩三は、裏口に停めたゴミ収集車の荷台から、自分の荷物(山から持ってきた着替えや道具)を運び込んでいた。


「手頃な空き部屋……。住み込みじゃねぇにしろ仕事終わりにでかい風呂には入りたいからな…。お、風呂も近いしこの部屋がいいな!」


鈴木は一階の奥、水回りに近い部屋に荷物を放り込み、荷解きを始めた。


その頃、音無賢人と幸田美咲は、並んで廊下を歩いていた。


「……どこの部屋にする?」


賢人が尋ねると、美咲は迷ったように視線を彷徨わせた。


「えっと……どこでも、いいんですけど……」


「一番端はやめよう。窓からの侵入経路になりやすいし、孤立する」


賢人は真剣な顔で廊下を見渡した。


「一階右側の、真ん中の部屋なんかいいんじゃないかな? ここならリビングも近いし、左右に人がいれば安全だ」


「……はい。音無さんがそれが良いと言うのであれば」


美咲が素直に従うと、賢人はその隣——エントランス側の部屋を指差した。


「じゃあ、俺はその隣にするよ。……何かあったら、必ず俺が最初に気づく位置だ」


「……ありがとうございます」


美咲は少し安心したように微笑み、指定された部屋へと入っていった。



■二階 食堂



「ただいま戻りましたー!」

「買い込んできましたよ!」


髙橋と白川が帰還し、広いダイニングテーブルの上に大量の惣菜や弁当、飲み物が並べられた。


寿司、焼肉弁当、カレー、オムライス、サラダ、そして鈴木のための焼酎とサラたちのためのビール。

全員が一通り荷解きを終え、テーブルを囲むように着席した。


東がグラス(中身はブラックコーヒー)を掲げる。


「……では。我々の新たな門出と、これからの戦いに」


東の短い音頭に、全員がグラスを合わせた。


「「「乾杯!!」」」


「うめぇ! やっぱ労働の後の肉は最高だな!」


鈴木が焼肉弁当をかき込む。


「お寿司! 久しぶりー! ねえアレックス、ここのマグロ最高よ!」


「俺は納豆巻き以外なら何でもいい」


「髙橋さん、このカレー美味しいですね。どこのですか?」


「あ、それは駅前の老舗のやつです。テイクアウトできたんですよ」


緊張が解け、和やかな食事が進む。


賢人は黙々と味噌汁を啜りながら、賑やかな食卓を眩しそうに眺めていた。


(……こんな風に誰かと飯を食うの、いつぶりだろう)



■キッチン



食事が終わり、片付けの時間。


幸田美咲は一人、シンクに向かって大量の皿を洗っていた。


「……ふぅ」


(これくらいの数なら、私一人でも……)


ガチャ。


後ろのドアが開き、サラが入ってきた。


「あら、美咲ちゃん。一人でやってるの?」


「あ、サラさん。はい、皆さんはお疲れでしょうし……」


「水臭いわねぇ。手伝うわよ」


サラは袖をまくり、隣に立った。


「あんな大男たちの食い扶持、一人で片付けてたら手が荒れちゃうわ」


「ふふ、ありがとうございます。……サラさん、お箸の使い方がお上手ですね」


「伊達に日本潜伏歴が長くないのよ。……ねえ、ご飯美味しかった?」


「はい。……とっても」


美咲は泡立ったスポンジを見つめた。


「久しぶりに……味がしました。一人で食べてた時は、砂を噛んでるみたいだったのに」


「そう。……それは何よりだわ」


サラは優しく微笑み、洗った皿を拭き上げた。


「この家は騒がしいけど、退屈はしなさそうね」


「あはは、そうですね」


美咲が笑い声を上げると、サラは少し驚いたように目を見開いた。


「……あら」


「え?」


「笑えるようになったじゃない。……可愛い笑顔よ」


「え……」


美咲はハッとして、自分の頬に手を当てた。


(私……今、笑ってた?)


両親が死んで、絶望して、もう二度と笑えないと思っていた。


でも今、サラとの他愛のない会話の中で、自然と笑みがこぼれていた。


「……はい。……嬉しいです」


美咲の目尻に、涙ではない、温かいものが滲んだ。

リビングからは、鈴木と谷が酒盛りで盛り上がっている声と、それを注意する白川の声が聞こえてくる。


この奇妙で温かい「家族」の中でなら、生きていけるかもしれない。


美咲はそう思いながら、サラと並んで丁寧に皿を洗った。


夕食の熱気が少し落ち着いた頃、東義昭がナプキンで口元を拭い、立ち上がった。


「……さて。腹も満ちたところで、今日は解散だ」


東は時計を見た。


「明日、今後の計画を練る**『大事な話』**がある。金剛寺への反撃、そして組織の運営についてだ。今日は英気を養い、明日に備えろ」


「了解です。じゃあ先生、送りますね」


髙橋俊明が立ち上がり、鈴木浩三の肩に手を置いた。


「鈴木さんも。山までひとっ飛びですよ」


「おう、頼むわ。やっぱ布団じゃねぇと眠れねぇ」


鈴木があくびをする。


「髙橋君、私の自宅経由で頼む」


「はいはい。……じゃあ皆さん、おやすみなさい!」


シュンッ!


空気が弾け、東、鈴木、髙橋の三人が瞬時に消え失せた。


残されたのは、これからこの館で暮らす六人——音無、幸田、谷、白川、サラ、アレックス。


東が去り際、残るメンバーに言い残した言葉が重く響く。


『しばらく最新機器はないが、マンパワーで警備を頼む。……頼んだぞ』


「……さてと」


サラ・コッホが椅子に座り直し、谷と白川に向き直った。


「機材の発注は済んでるみたいだけど、届くのは明日以降よ。今夜は私たちの目と耳だけが頼り。……そこで質問だけど」


サラは二人の刑事を値踏みするように見た。


「あなた達、警備はどこまで出来る?」


谷雄一が胸を張って答えた。


「体力勝負なら任せとけ! 一晩寝ずに立ってることくらい、張り込みで慣れっこだぜ!」


「……はぁ」


サラとアレックスは顔を見合わせ、呆れたように肩をすくめた。


「まぁ、そんなもんだよね」

「根性論か……」


「白川は?」


アレックスが尋ねると、白川も少し自信なさげに答えた。


「……私も、似たようなものです。不審者が来れば対応できますが、専門的な防衛戦術となると……」


「オーケー、分かったわ」


サラはパンと手を叩いた。


「しばらくは、私とアレックスが交代で夜の見張りをするわ。あなた達は部屋で寝てなさい」


「なっ、バカ言うな!」


谷が身を乗り出した。


「お前らだけに負担をかけられるか! 俺たちも手伝うぜ!」


「気持ちはありがたいが……」


アレックスが困ったように眉を下げる。


「これは餅は餅屋だ。素人が混ざると指揮系統が乱れる」


「素人だと!? 日本の警察をナメるなよ!」


谷がカチンときて食い下がる。


すると、サラがスッと立ち上がり、窓の外を指差した。


「じゃあ谷。質問よ」


「あ?」


「今日、私たちが車でここに来るまでに通った森の道。……あの中で、スパイや狙撃手が隠れて監視しそうな**『死角ブラインド・スポット』**は、何箇所あった?」


「え……?」


谷が言葉に詰まる。


サラは畳み掛ける。


「その場所を全てカバーした上で、一晩警備するなら、具体的にどのルートで、何分間隔で巡回するのがベスト? 敵にパターンを読ませない歩き方は?」


「そ、それは……」


谷は黙り込んでしまった。


刑事として犯人を追うのとは違う。


「見えない敵」から「拠点を守る」という軍事的な視点が、自分には欠けていることを痛感させられた。


サラはふっと表情を緩め、優しく言った。


「ごめんね、意地悪な言い方して」


「……いや」


「気持ちは本当にありがたいの。でもね、これは私たちの死活問題なのよ」


サラは真剣な眼差しで続けた。


「ここを突破されたら全員死ぬ。だから妥協はできない。……幸い、私だけじゃなくてアレックスもいるから、交代で警備できる分、そんなに負担じゃないのよ? 最新機器が届くまでの辛抱だしね」


谷は深呼吸をして、頭を下げた。


「……悪かった。俺の認識が甘かったよ」


そして、顔を上げてサラを見た。


「だが、俺も悔しいままで終わりたくねぇ。……今度、その警備のコツってやつを教えてくれねぇか? 俺も戦力になりたい」


その言葉に、サラは花が咲いたように笑った。


「喜んで! ……じゃあ、今晩は私と一緒に巡回しましょ? 特別授業してあげるわ」


「おう、頼む!」


アレックスも微笑み、白川に向き直った。


「そういうわけだ。白川、明日は俺たちの番だから、今日はゆっくり休むんだぞ?」


「……はい! ありがとうございます、アレックスさん」


白川も素直に従った。


その一部始終を、キッチンで洗い物を終えた音無賢人と幸田美咲が眺めていた。


「……すごいですね、あの人たち」


美咲が小声で囁く。


「プロ同士が、お互いを認め合ってるって感じで……カッコいいです」


「ああ」


賢人も頷いた。


「警察とスパイ。立場もやり方も違うけど……守りたいものは同じだ」


言い争いになっても、最後には互いを尊重し、高め合おうとする大人たち。


この屋根の下には、確かな信頼が育ち始めている。


「……いいチームになれそうだな」


賢人の呟きに、美咲も「はい」と嬉しそうに頷いた。


外は暗い森に囲まれているが、この洋館の中だけは、温かい灯火に守られているように感じられた。


「さあ、授業開始よ! ついてきなさい、生徒一号!」


「おう! お手柔らかに頼むぜ先生!」


サラと谷が懐中電灯を手に、元気よく夜の巡回へと出かけていく。


最強のシェアハウスの、最初の夜が更けていった。

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