表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/8

0007 大英雄 バーソロミュー




時間エミュレーター。

レジェンダリーダンジョンで頻繁に現れる、いわゆるアイテムボックスだ。封印されたボックスを開けると、召喚獣が現れて試練を与える。その試練を突破すれば、莫大な報酬を手に入れられる。ヒストリックダンジョンでも時々出現することがある。


「えーっと。時間帯からすると 0049 年?紀元前の時代ですか……。カードリック王朝とハクセン帝国の時代ですね」

「アカデミーでの考古学の勉強を怠らなかったんだな、イタト」

「人様に恥じない程度にはね。だとすると、大将軍バソロミューか使徒ラムエルが登場する確率が高いです。少し攻略が厄介になりますね」


両者ともに武闘タイプで、決闘を仕掛けてくる可能性が高かった。知識の試練を課すアテニフやカードロよりは難しかったが、そこまで忌避するほどではない。


「やりますか?」

「男ならGOだ!、イタト」


『 kakalol 様が入場しました 』


kakalol: Yo. Hi.

Gigigigigigi: お、面白いところに来たな。

hih2378: ようこそ。今、ワクワクしてるぜ。


一人の視聴者が入室すると同時に、イタトはエミュレーターの時間を 12 時に合わせ、アラームを作動させた。


『作動時間エラー。作動時間エラー。守護者呼び出し。守護者呼び出し』


さて、誰が出てくるだろうか。

そして、現れた人物は。

マントを羽織り、銅色の肌に引き締まった筋肉を持つ、砂漠の大英雄。大将軍バソロミューだった。


「初めて見る未来人か。ふむ。我を呼び覚ましたのは貴様らか」

「試練に挑み、報酬をいただくためです」

「我の試練は簡単だ。三分!我を三分だけ食い止めてみせよ」


そう言うと同時に、大将軍バソロミューは突進してきた。

俺は慌ててイタトに指示し、レールガンを作動させた。

最新の魔導科学文明の産物と呼ばれるレールガンが轟音を突き破り、バソロミューの腕を強打した。


「ちと、チクっとしたぞ」

「まさか!」


傷一つ付いていなかった。いや、反弾鋼気に阻まれた、というのが正しい表現だった。

バソロミューは咆哮をあげながら、標的を俺に変えた。俺は剣を真直ぐに構え、彼が繰り出したクローを斜めに受け止めた。

かすめて通り過ぎた場所に、火の跡が燃え尽きるように残った。

大将軍バソロミューは、砂漠の大英雄らしく、炎の属性力を宿していたのだ。


「属性力を知らぬとでも!愚かな未来人め!」

「クソ!」


すぐに大規模な作戦を実行するイタト。


「俺がサテライトを起動させます!リョウさん。最後まで少しだけ持ち堪えてください!」


人工衛星の座標を撃ち上げ、軌道爆撃を仕掛けようとするイタト。

彼はすでにノートパソコンを取り出し、計算に取り掛かっていた。集中を乱すことのできない状況。

ここからは、俺一人でこの難題を解決しなければならなかった。


「貴様は随分と祝福されているな、我と正々堂々の 1 対 1 か」

「もちろんです。僕一人でも、あなたには十分でしょう」

「デッキも空っぽの貴様が?」


スキャン技術で俺のデッキを覗き見たバソロミューは、嘲笑を浮かべた。いくら彼が古代人だとはいえ、デッキ程度は扱えたからだ。

バソロミューがデッキから取り出したのは、長大な方天画戟。そして10重畳の強化を実行した。

凄まじい速度で強化を終え、振り下ろされた彼の槍の前に。


俺は。

死んだ。

倒れゆく俺の後ろ姿を見つめるバソロミューは、冷ややかに言い放った。


「身の程を知らぬ蛆虫は、そこに横たわっていろ」


幽霊馬を召喚したバソロミューは、一気に駆け抜けようとする。


「いけない!」


その瞬間。

時空が停止した。


(このまま、全てが終わってしまうのか)


良いカードを引いていながら、たかが古代人一人に勝てなかったからといって。

全てが台無しになるのか?

ただ経験が多いというだけで、戦闘に真剣に臨まなかった罪?

タダでクリアできると喜んで、ただ付いて行っていただけの罪?


違う。

俺は。


(あまりにも安易すぎたのだ)


そうだ。

全ては俺の過ちだ。

だが、もしもう一度、俺に機会があるのなら。

こんなにも虚しく過ごしたりはしないだろう。


「力」


力が必要だ。

何よりも、全ての状況を変えられる圧倒的な力が!


『面白い奴だな』


今、誰だ?俺に話しかけたのは。


『見る限りでは、面白い状況に陥っているようだな』


あなたは、僕が引いたカードの一人ですね!


『そうだ。見てるだけじゃ退屈でな。特に、お前が悪いようにも思えないしな』


そうでしょう?

そうですよね?ね?


『どこ、一度だけ、儂がお前に力を貸してやろう』


ところで、あなたは誰なんですか?


『儂は数多くの国をさまよい、様々な名前を得た。そして今は、そんな虚名に固執してはいないが、それでも晩年には一つの名で呼ばれた』


だから、一体名前は何なんですか!


『儂は大剣豪だいけんごうだ』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ