支配欲
夜、君と会った日のことを思い出しながら帰宅する。
小さな手に華奢な身体、僕は魅了され、その場で家に連れ帰った。君の了承も得ず。
もう君を家から出すつもりは無いし、出したとしても病院の時ぐらいだろう。
君は専業主婦とは言えないかな。ずっと僕の帰りを、家で待つことだけが仕事。買い出しから炊事洗濯まで、全て僕がおこなっている。
もう君は僕無しじゃ、生きていけないね。
「ただいま。」
君は「おかえり」という代わりに、顔を見せた。君が出迎えてくれたという事実に、僕は顔がほころぶ。
「会いたかった。」
「私も」とは応えてくれなかったが、君が擦り寄ってきた。よし、ご飯にしよう。
「いただきます。」
君はマイペースだ。さっさと食べてしまう時もあれば、残す時もある。そしてその残りはとっておかないと、君は怒る。
そういえば、僕の友人がこの間家に来た時、君は僕に接する時のような甘い声で友人に話しかけていたね。その高くてとろけるような甘い声を、他人の為に発するなんて、妬けてしまうよ。
「風呂、入ろっか。」
君はなかなか一緒に入ってくれない。
本当に時たま、入ってくれるが、僕が抱いていないと逃げてしまう。そんな所も君らしくて好きだ、というか、僕は君の全てが好きだ。
濡れた身体が、いつもと印象を変えて、僕は君から目が離せない。
「おやすみ。」
気づいたら君が隣にいた。自分より小さなその身体を、優しく組み敷いてしまいたい。そして君の匂いを嗅いで、君の体に触れて、君を感じたい。
出会ったあの日から、僕は君の虜だ。
「行ってきます。」
朝、僕が家を出る時に、君は玄関まで見送りに来た。
「行ってらっしゃい」の代わりに君がひと鳴き、
「にゃあ。」と返した。