夢を叶えたい話
こんな都市伝説がある。もし検索サイトに、空想配達便と検索したら、強く願った人にだけそのサイトが現れ、空想を配達してくれる。
俺には夢がある。小説家になって、自分の気持ちを世の中にぶち撒けたいと言う夢が。
公募で何度も新作の小説を送っているが、いつも最終審査で落ちてしまう。
そんなとき、このサイトを知った。空想の中だけでも夢を叶えられたら。あとネタになるかのしれない。そう思い、俺はサイトに自分の名前と配達日を書いた。
配達日になった。
ピンポーン、チャイムが鳴る。
ドアスコープで覗くと、黒装束の怪しげな男とも女ともつかない人が立っていた。
怪しい人物だったが、これくらいが本物っぽくてワクワクする。物語の中の人みたいだ。
手に小さな箱を持っていた。
ドアを開けると、一夜仁さんですか?と尋ねられた。
黒装束の姿に似合わず、若い声だった。
もしかしたら、まだ若い人なのかもしれない。
俺は、はい、と返事をした。
黒装束の怪しい人は小さな箱を差し出した。
その箱を開けると、自分が最も望む空想が見られるという。
人によって相場は違うが、概ね30分くらいらしい。
言葉少なく、黒装束の人はそう説明して、去って行った。
部屋に戻って早速、箱を開けてみた。高揚が止まらなかった。
人のガヤガヤ騒ぐ音がする。気が付くと、俺は小説の受賞パーティーに参加していた。
とても名誉ある賞に受賞したのだ。
マイクの前で、震える声でスピーチをする。
カメラのフラッシュが眩しかった。
俺はその時初めて、自分が人生の主人公になれた気がした。
空想はそこで終わった。
少しぼうっとして、時計を見る。15分を経っていなかった。でも良い夢だった。
これを夢にするか現実にするかは、俺の努力に掛かっている。
俺はノートパソコンに向かうと、猛然と言葉を書き連ねた。




