眠りたい話
こんな都市伝説がある。もし検索サイトに、空想配達便と検索したら、強く願った人にだけそのサイトが現れ、空想を配達してくれる。
わたしは限界だった。元々寝つきが悪い方だったが、最近は特に寝れない日々が続いた。辛い。寝たい。でも寝れない。
寝れずに朝日を迎え、その後に限界が来て、ようやく浅い眠りが来る。
足りない。質も量も。
睡眠外来にかかる前に、最後の悪あがきのようにこのサイトに名前と配達日を書いた。
少しでも心を安らぎたかった。
配達日になった。
ピンポーン、チャイムが鳴る。
ドアスコープで覗くと、黒装束の怪しげな男とも女ともつかない人が立っていた。
怪しい人だ。
手に小さな箱を持っている。
わたしはドア越しに誰ですか?と尋ねた。
黒装束の人は、空想を届けに来たものです。と答えた。
恐る恐るドアを開ける。
ドアを開けると、今咲千真さんですか?と尋ねられた。
黒装束の姿に似合わず、誠実そうな声だった。
わたしは、はい、と返事をした。
黒装束の怪しい人は小さな箱を差し出した。
その箱を開けると、自分が最も望む空想が見られるという。
人によって相場は違うが、概ね30分くらいらしい。
言葉少なく、黒装束の人はそう説明して、去って行った。
わたしの心は限界に近かった。何も用心せず、早速その小さな箱を開けた。
空想の中で、わたしは夜の海にいた。星空が瞬いて、細波があちらこちらから聞こえてくる。砂丘はわたしの足を優しく摩った。
酷く満ち足りた気持ちになって、波の中を少し入ってみる。冷たくて気持ちよかった。思わず全身を浸した。
ずっとここに居たい。
そう思ったとき、空想が終わった。
わたしは部屋を暗くして、YouTubeで波の音を再生して、ベットに潜り込んだ。さっきの空想を少しでも再現するために。
すると、少しずつ睡魔がやってきて、わたしの意識を攫っていった。
この日わたしは、久しぶりに夢も見ずに眠ることが出来た。




