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空想配達便  作者: 月蜜慈雨


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5/11

疲れた話




 こんな都市伝説がある。もし検索サイトに、空想配達便と検索したら、強く願った人にだけそのサイトが現れ、空想を配達してくれる。 



 窓の外は、雨が降り注いでいる。

 ただでさえ疲れているのに、これでは気が滅入ってしまう。

 そんなとき、このサイトの存在を知った。

 リモートの仕事に疲れ果てて、このサイトに名前と配達日を書いた。

 体はいつも思ったように動かない。仕事のことで頭がいっぱいだから。

 そんなとき思った。こんなに頑張った先にある終わりって、どんな景色が見られるんだろう。

 そう思ったからかもしれない。こんな怪しいサイトに名前を書いたのは。




 配達日になった。

 ピンポーン、チャイムが鳴る。

 ドアスコープで覗くと、黒装束の怪しげな男とも女ともつかない人が立っていた。

 怪しい人だ。

 でもなんだかそれが本物っぽい。



 ドアを開けると、宮本マリさんですか?と尋ねられた。

 黒装束の姿に似合わず、若い声だった。

 わたしは、はい、と返事をした。

 黒装束の怪しい人は小さな箱を差し出した。

 その箱を開けると、自分が最も望む空想が見られるという。

 人によって相場は違うが、概ね30分くらいらしい。

 言葉少なく、黒装束の人はそう説明して、去って行った。




 わたしは早速パソコンの前にその小さな箱を置いた。

 今は昼休憩、黒装束の人の話なら、休み時間内に終わるだろう。

 わたしは意を決して箱を開けた。







 空想の中で、わたしはシロツメクサが花開く花畑に囲まれていた。思い出した。子供の頃好きだった花だ。

 穏やかな風が髪を揺らして、それが心地よかった。

 思い切って、花畑に倒れてみた。深く息を吸い込むと、濃い草の匂いがする。

 見上げると真っ青な空が、太陽を携えて輝いている。

 花の上を、夢のような素敵な蝶たちが舞っていた。

 空想はそこで終わった。






 死んだらこんな景色が見られるなら、あともう少しだけ頑張れるかも。

 わたしは背伸びして、パソコンに向かって仕事を再開した。

 あとちょっとだけ、あとちょっとだけ、と呟きながら。

 窓の外はまだ雨が降っていたけど、わたしの心は晴れやかだった。

 あとちょっとだけ。

 不思議と、タイピングを打つ手が早くなっていった。

 心にはまだ、あの景色が広がっていた。





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― 新着の感想 ―
頑張った先にある風景、主人公にとってはその風景をイメージできたことが、何よりの仕事に向かうモチベーションとなったのですね。 広がる真っ青な空の下、穏やかな風が吹く中、シロツメクサの花畑が、とても心に…
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