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空想配達便  作者: 月蜜慈雨


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4/11

告白したい話


 

 こんな都市伝説がある。もし検索サイトに、空想配達便と検索したら、強く願った人にだけそのサイトが現れ、空想を配達してくれる。 



 俺はサイトに自分の名前を書いて、配達日を指定した。

 好きな人がいる。

 その人は笑顔が素敵な人で、性格も穏やかで、周囲に好かれていて、人の悪口を言ったところを見たことがない、俺なんかの口では到底語り尽くせない。

 つまりは素晴らしい人な訳だ。

 勇気を出して話しかけた俺に、その人は優しく言葉を返してくれた。

 日を追う事に好きが積み重なっていく。

 順調に仲良くなれたが、中々告白に踏み切れずにいた。

 勇気がないから。

 でももし空想でなら告白できるかもしれない。

 そんな一縷の望みをかけて、俺はサイトに願いを込めた。





 配達日になった。

 ピンポーン、チャイムが鳴る。

 ドアスコープで覗くと、黒装束の怪しげな男とも女ともつかない人が立っていた。

 怪しい奴だ。

 俺はドアを開けるのを躊躇ったが、首を横に振り、恐る恐るドアを開けた。

 杉本久さんですか?

 そう声をかけられた。

 俺は挙動不審にはい、と言った。

 黒装束の怪しい奴は小さな箱を差し出した。

 その箱を開けると、自分が最も望む空想が見られるという。

 人によって相場は違うが、概ね30分くらいらしい。

 言葉少なく、黒装束の人はそう説明して、去って行った。




 俺は自分の部屋に戻り、じっと小さな箱を見つめた。

 少し震える指で、箱を開ける。




 空想の中で、俺は好きな人と相対していた。

 俺は叫ぶように、好きだ、好きだ、好きだと言う。

 その人は満面の笑みで、俺に向かって頷いた。

 言葉はなかった。

 ただ、お互い自分たちの気持ちを確信していた。そのことだけが本物のように思われた。

 空想はそこで終わった。





 俺は実際に告白することにした。

 あの空想の中の、あの景色が見たかった。

 俺は勇気を出して、声を振り絞り言った。


「好きです」


 情けないが、その一瞬、目を瞑ってしまった。

 好きな人が困ったように笑う。

 ああ、やっぱりダメなんだ、そう思ったとき、両手を差し出された。


「不束者ですが、よろしくお願いします」


 すぐに両手を握りしめた。


「こちらこそ!」


 俺たちは微笑み合い、空想の中にいたとき以上の幸せの最中にいた。








次回「疲れた話」

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