告白したい話
こんな都市伝説がある。もし検索サイトに、空想配達便と検索したら、強く願った人にだけそのサイトが現れ、空想を配達してくれる。
俺はサイトに自分の名前を書いて、配達日を指定した。
好きな人がいる。
その人は笑顔が素敵な人で、性格も穏やかで、周囲に好かれていて、人の悪口を言ったところを見たことがない、俺なんかの口では到底語り尽くせない。
つまりは素晴らしい人な訳だ。
勇気を出して話しかけた俺に、その人は優しく言葉を返してくれた。
日を追う事に好きが積み重なっていく。
順調に仲良くなれたが、中々告白に踏み切れずにいた。
勇気がないから。
でももし空想でなら告白できるかもしれない。
そんな一縷の望みをかけて、俺はサイトに願いを込めた。
配達日になった。
ピンポーン、チャイムが鳴る。
ドアスコープで覗くと、黒装束の怪しげな男とも女ともつかない人が立っていた。
怪しい奴だ。
俺はドアを開けるのを躊躇ったが、首を横に振り、恐る恐るドアを開けた。
杉本久さんですか?
そう声をかけられた。
俺は挙動不審にはい、と言った。
黒装束の怪しい奴は小さな箱を差し出した。
その箱を開けると、自分が最も望む空想が見られるという。
人によって相場は違うが、概ね30分くらいらしい。
言葉少なく、黒装束の人はそう説明して、去って行った。
俺は自分の部屋に戻り、じっと小さな箱を見つめた。
少し震える指で、箱を開ける。
空想の中で、俺は好きな人と相対していた。
俺は叫ぶように、好きだ、好きだ、好きだと言う。
その人は満面の笑みで、俺に向かって頷いた。
言葉はなかった。
ただ、お互い自分たちの気持ちを確信していた。そのことだけが本物のように思われた。
空想はそこで終わった。
俺は実際に告白することにした。
あの空想の中の、あの景色が見たかった。
俺は勇気を出して、声を振り絞り言った。
「好きです」
情けないが、その一瞬、目を瞑ってしまった。
好きな人が困ったように笑う。
ああ、やっぱりダメなんだ、そう思ったとき、両手を差し出された。
「不束者ですが、よろしくお願いします」
すぐに両手を握りしめた。
「こちらこそ!」
俺たちは微笑み合い、空想の中にいたとき以上の幸せの最中にいた。
次回「疲れた話」




