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バナナの皮で死ぬ話


 

 こんな都市伝説がある。もし検索サイトに、空想配達便と検索したら、強く願った人にだけそのサイトが現れ、空想を配達してくれる。



 そんな美味しい話あるわけない。そんなことは分かっている。それでも、そんな話に縋らないとやっていけないときもある。

 僕はそのとき、かなり追い込まれていた。ただの高校受験だけど、僕にはかなりのプレッシャーになっていた。

 そのとき、この都市伝説を聞いて、興味本位で検索してみた。

 そしたら本当に出てきたので、僕は自分の名前と、親が来ない日を配達日に指定した。

 自室のベッドで一頻り唸り、考える。

 さて、どんな空想が届くのか。




 配達日になった。

 ピンポーン、チャイムが鳴る。

 ドアスコープで覗くと、黒装束の怪しげな男とも女ともつかない人が立っていた。

 胸がドキドキと高鳴った。

 これはかなり本物ぽいぞ。

 僕はドアを開けた。

 黒装束の人は、やはり男とも女とも分からない声で、水木有馬さんですか?と問いた。

 僕ははい、と頷いて、小さな箱を渡された。

 その箱を開けると、自分が最も望む空想が見られるという。

 人によって相場は違うが、概ね30分くらいらしい。

 言葉少なく、黒装束の人はそう説明して、去って行った。




 僕は一目散に自分の部屋に戻った。

 ベッドの上にちんまりと置かれた箱が、早く開けてと急かしているようだ。

 その声に応えるように、指が勝手に動く。

 そしてドキドキしながら、箱を開けた。




 気がつくと、僕はいつのまにか道を歩いていた。真っ白な光り輝く道だ。

 道には、塵一つ落ちていない。

 その道を歩くと、成功が約束される。

 僕はそんな確信すら抱いていた。

 悠々自適に歩いてると、突然頭からすっ転んだ。激しく地面と衝突して、視界がぶれる。

 ぬるりと感触がして、血が流れていることが分かった。僕はなにがなんだか分からなくてパニックになった。

 意識がなくなる直前、僕はさっきまで歩いていた自分の足元にバナナの皮が落ちているのを見た。



 空想はそこで終わった。




 現実とも空想ともつかない曖昧な中、僕は笑った。

 死因がバナナの皮で滑って転んだは面白すぎる。

 僕は徐に椅子座った。

 そして勉強を再開した。

 死因がバナナの皮なら悪くないな。

 そんなことを思いながら、ひたすら方程式を問いた。






次回「人間以外になりたい話」

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