ゲームのキャラに会いたい話
こんな都市伝説がある。もし検索サイトに、空想配達便と検索したら、強く願った人にだけそのサイトが現れ、空想を配達してくれる。
ゲームとは罪深いものだと思う。特にソシャゲは。
私の好きなゲーム「特色報生」は、そんな罪深いソシャゲの一つだ。「特色報生」は、色で支配された世界で、色の擬人化したキャラたちが、ペンキを武器にして世界に立ち向かうゲームだ。
ゲーム性が高く、口コミも星も上々だ。
そんなゲームの、グレイフルというキャラを私は推している。
グレイの名前の通り、グレイフルは銀の擬人化だ。髪も銀髪で、眼の縁が若干緑なのがポイント高い。仲間の中でも一匹狼的存在で、一人行動も多い。そのクールな感じが私のツボに刺さった。
日を追うごとに、彼について考えている自分がいる。つい、彼のいる世界に行きたいっと願ってしまう程。
そんなとき、このサイトを知った。
怪しいのは分かっていたが、好奇心に駆られて検索すると、本当にあった。
もしかして夢なのかもしれないと思って、慌てて名前と配達日を書いた。送信ボタンをクリックする指が、興奮で少し震えた。
自分は何か犯罪を犯したような気分に、日に日になっていったが、その日は遂に来た。
お皿洗いをしている最中、ピンポーン、チャイムが鳴った。
「はい!少しお待ちください」
慌てて手拭いて出ると、そこには全身黒装束の怪しい人が小さな小箱を抱えて立っていた。
やはり犯罪だったかと、途端に身体が強張って、意識がクラクラしてくる。
怪しい人は割と普通の声で、遠藤美鈴さんですか、と本人確認してきた。
否定したかったが、その小さな箱が気になり、小さく頷いてしまった。
怪しい人は、小さな小箱を私に差し出して、こう言った。
「小箱を開けると、空想が出てきます。人によりますが、空想はおよそ30分ほどです」
そう言って怪しい人は去っていた。
改めて小箱を見る。小さな白い正方形の箱だ。この中に、危ない麻薬が入っているかもしれない。そしたら、警察に連絡しよう。
落ち着かなく椅子に座り、小箱を開けた。
一瞬で景色が変わった。伝統的な日本家屋の畳の部屋にいた。井草の薫りと線香の薫りがする。空想の中で、私は着物を着ていた。黒地に銀の刺繍が施された上品な着物を着ていた。
「おい」
後ろから声を掛けられ、恐る恐る振り向く。何回もボイスを聞いたから見なくても分かる。この声の主は、グレイフル。
振り向くと、グレイフルが同じ柄の着物を着て柱に寄りかかり、こちらを怠そうに見ていた。いつものサイバーパンクな衣装も好きだけど、こちらも似合っている。
緊張しながら、返事をした。
「はい」
グレイフルは、ニヤッと笑い、拳を突き出した。
「ご贔屓ありがとう。これからもよろしくな」
興奮しすぎて、自分がなんて返事をしたか覚えていない。ただ、叫んだことだけは分かった。
そして空想は終わった。
気が付くと私は床に倒れ伏していた。そばには、小さな空箱が一つ、ぽつねんとある。
おもむろに立ち上がり、スマホを取り出し、ゲームを起動する。
画面に現れるグレイフルに向かって言った。
「こちらこそ、これからもよろしくね」
そして届かないと知りながら、画面の向こうの彼に向かって、拳を突き出した。




