空想配達人を追う者
こんな都市伝説がある。もし検索サイトに、空想配達便と検索したら、強く願った人にだけそのサイトが現れ、空想を配達してくれる。
黒装飾の人が建物を出ると、声をかけられた。
振り向くと、強面の厳しい男が、訝しげに黒装飾の人を見ていた。
そして声をかけた。
「お前だな。空想を配っているっていう奴は」
黒装飾の人は頷いた。
男が頭をガシガシと掻きむしる。そして気怠げに言った。
「俺はな、誰が何を信じようが、そんなこと知ったこっちゃねぇ。だが、これも依頼だ」
男は黒装飾の人を睨みつけた。
「お前、空想を配達するのをやめろ」
黒装飾の人はしばらく、押し黙ってから、口に出した。
「…それは出来ません」
男は、ハッと鼻で笑った。
「だろうな。言ってみただけだ。だからお前の正体を必ず突き止める。そして空想を辞めさせる」
黒装飾の人は首を傾げた。
「なぜ、空想を届けるのをあなたが止めるんですか?」
「依頼だよ。依頼。俺は探偵なんだ」
男がそして、黒装飾の人に軽く頭を下げた。
「今日は偵察がてらの挨拶だ。それじゃな」
そう言って、男は黒装飾の人から去っていった。
その背中には、何がなんでも正体を突き止めるという強い意志を感じた。
黒装飾の人は配達以来、初めての危機感を覚えた。




