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一周目の終わり、二周目の始まり

初めての小説づくり、こういうのって緊張だね

俺は天宮新、どこにでもいるただの高校2年生だ。

昼休みには友達と一緒に飯を食い、普通に授業を受け、放課後は友達と寄り道しながら、わいわい帰る。

最近は仲の良い女子もできて、とても良い学校生活を送れている。


「新、最近あの子とはどんな感じなんだ」

弁当の卵焼きを空中に泳がせながら、俺にイケメンな顔を押し付けてくる。


「あの子って誰だ?」

こいつは朝霧秀、文武両道、才色兼備何でもできる人間だ。

なぜ、そんな奴がごく普通の男子高校生と差しで飯を食っているのかというと、こいつは俺の小学校からの幼馴染だからだ。


「あいつだよ、すみれちゃんだよ、すみれちゃん。いい感じなんだろ?合宿の時に言っていたじゃないか。」

卵焼きを口に入れ、もぐもぐしながら、にやにやしながら、俺の質問に回答する。

俺と秀は同じバレー部に入っていて、すみれはバドミントン部に入っている最近俺が気になっている女子だ。


「すみれちゃんって、おい、‘ちゃん’付けするな、すみれさんと呼べ。今度の週末、秋グルメフェスに行けることになったわ。お前がセッティングしてくれたおかげ、マジでありがとうな」

屋上までの踊り場から、入る日光が秀の後ろから入る。

まるで神様みたいだ。

全くなかったすみれとの接点を作ってくれたので、今は俺的神序列一位だけれどもそんなことを言うと調子に乗るので、その言葉は心の中にしまっておく。

文武両道、才色兼備の人間には、何もしなくても落ちた食べ物に群がる蟻のように、人が集まる。

そして、その落ちた食べ物には巣への道が大量に紹介される。

もちろんバレー部のコミュニティにも手は及ぶ。


「いやいや、顧問に遅刻の口裏を合わせてくれたお礼だよ。俺は恩を返す人間だからな、これくらいお安い御用さ。」

弁当が食べ終わり、デザートのミカンをむきながら、さも当然のような顔で答える。


「恩を返すって、、、」

秀に聞こえないくらい小さな声でボソッとつぶやく。

こいつはいつもこうだ、あげる恩と返される恩がまるで見合っていない。

何でもかんでも簡単にできるから、自分がしていることがわかっていない。


「でな、すみれの話なんだけどフェス終わった後に告白することにしたわ。」

秀の手助けもあって、いい感じの雰囲気になっている。そろそろ告白しても、OKをもらえることは確実だろう。


「まじで!?やっとか、俺が夏休みに頑張ったかいがあったよ。

女気ひとつなかったお前が気になることができたといってきた日には、ついに暑さで頭が壊れたかと思ったけど本気だったんだな、応援してるぜ。絶対成功させろよ。」

一言多いな。今までは、どうせみんな秀のことが好きだし、幼馴染との三角関係とか死んでも避けたかったことだから、そんな相談は今までしなかった。

でも、もう俺も高校二年生、最近もう学生が終わるんだという自覚が出てきた。

漫画のような、ドラマのような、ラブソングのような恋愛をするためにはもう猶予がない。

そんな恋愛をするために秀を味方につければ、とても心強い。

そんなわけで、秀に相談したのだ。決して夏の暑さでいかれたわけではない。

まあ、全力でバックアップしてくれて、ほしい情報も人脈も紹介してくれて、感謝はしている。


「まあ、ありがとう。で、放課後どうする?久しぶりにテニ部オフだけど。何かする?」

少し気恥しいから、話題を変える。

日曜日以外のすべての曜日に部活があるテニス部、今日は昨日の雨でコートの状態が悪いから、休みになったのだ。


「ラーメン食いに行かね?駅前に新しくできたらしいんだけど、スープのもとが虫らしい。」

笑顔でえげつないことを言ってくる。

こいつは少しずれているんだよな。

虫を食うとか死んでもしたくないことだが。


「まじで言ってる?まず何の虫だよ、おいしいのかそれ。」

別に虫が嫌いということではない。

昔はよく、セミとかバッタとか捕まえて、次の日には殺すようなことをしていたし。

夏休みには、山に入ってトラップを大量に仕掛けて母親に怒られていた。


「虫はコオロギらしい。虫のおかげかは知らないけどラーメンはうまいらしい。いこうぜ。

一人で行くのは恥ずかしいし、こんなことお前にしか頼めないんだよ。おごるからさ、な?」

だんだん食べている秀のみかんがコオロギに見えてきた。

まあ、気になるは気になるし奢られるなら、付き添ってやらんくもないが。

そんな目で見るな、お前なら来てくれるよなっていう信頼に満ちた目。


「まあ、奢ってくれるなら、行ってやるよ。」

どうしてもって顔してるし、断ったら罪悪感すごそうだし、奢ってくれるっていうし、仕方ないよね。


「ありがとう!本当にお前はいいやつだな。さすが俺の幼馴染」

散歩行くよっと言われた犬のように、おやつを差し出された犬のように、目がキラキラしている。


「ただし、ただしだ、おいしくなかったら本当に許さないからな。」

せっかくのオフの日にコオロギラーメンを食べに行って、体調を崩し、デートに行けなくなったら元も子もないからな。


「大丈夫だぜブラザー。信頼できる情報源から提供してもらった情報だ。問題ない。」

ぱちんと指を鳴らして、俺に指をさしてキメ顔をする。

俺がやったら共感性羞恥で死にそうになるくらいには痛い人間になるだろう。

秀がやるとなぜか様になる。


「大丈夫か、その情報源。この前は石の形をしたチョコレートじゃなくて、石味のチョコレートとかいう意味の分からないものを提供してきただろ。

どこのだれかは知らんがいかれた食癖持ってんな」

秀が少しずれた常識というか、考え方をしているのはおそらく、この信頼できる情報者のせいだろう。

毎回毎回、紹介してくるものは命にかかわりそうなものばかりだ。


「大丈夫大丈夫、じゃあ俺そろそろ用事あるから行くけど、お前どうする?」

コオロギラーメンのアポが取れたからだろうか、とても上機嫌な声をしている。


「俺は少しここで寝てから行くわ、今日の日光は最高に光合成できる。」

また、告白ですか、人気者め。そんなことを心でつぶやいて、秀の質問に答える。

秀は人気者だ。何でもできる。顔も性格もいい。俺とは真反対だ。

毎日のように告白される。

だからと言って、男子から嫉妬の目が向けられることはない。

秀から発せられる光には、同性といえどポジティブな気持ちにさせてしまう。


「そうか、じゃあ次の時間は移動教室だから遅れるなよ。」

弁当箱を縛り、くるくると回しながら階段を下っていく。

何をやっても様になるな。改めてそう思う。

選ばれた人間なのだろう。


夏が終わり涼しくなってきたこの頃、太陽の日差しも優しくなってきて眠気を誘う。

昼食後のこの時間、程よく廊下から聞こえてくる騒音、ベストシチュエーションだ。

ちょうど体育祭が始まるということで、機材が窓の横にいい感じにセッティングしてある。

まるで、ここで寝ろと言わんばかりに。


「よいしょ」

少し高い段差を乗り越え、床ほど固くはないことに少しの喜びを感じ、少しの休憩と言って、瞼を閉じる。

昨日は雨でコートを使わずに筋トレしてたからかな。体がまだ休息を欲しがっている。

意識が遠のいていく。


「きゃああああああああああああああああ」


どうしたのだろう。


「やばくね?先生!ちょっと来てください。

先生じゃないだろ、救急車先に呼べよ。」


急に騒がしくなったな。


「おい、大丈夫か?隣のクラスのやつか?」


体が痛い、寝すぎたかな。


「脈はまだあるな、おい学級委員、保険医呼んで来い。

救急車はいま呼んだからな、もう少し我慢しろよ。」


ぼやけた視界から、歴史の先生が映し出される。

もう授業始まってしまったか、ミスったな。こんなに寝るとは思わなかった。


「とりあえず邪魔にならないように、学級委員以外は教室に戻って自習していろ。」


周りの状況からして、俺は階段から落ちたのだろう。

体は動かないし、瞼もほとんど開かない。呼吸も浅い、鼓動が鼓膜を振動させる。

まずいな、このまま死んでしまうのだろうか。

やっと普通の学生生活から、一段登れそうなところなのに。

やっと軌道に乗ってきたのに。


視界が閉じる。


真っ暗な世界で、自分の死を悟る。


生まれ変わるとしたら人間がいいな。


秀みたいにもっと人とうまくやろう。


そうすればもっと充実した人生を送れるはずだ。





「立派な男の子ですよ、陛下」

背中に生暖かい感触が伝わる。


陛下?何のことだ。何も見えない、体も動かせない。


「おんぎゃー、おんぎゃー」

なんだよ、うるさいな


「はっ、はっ、はっー、元気がいいな、よく頑張ったな、エイディー」


誰の声だ?エイディーって誰だ?


「はぁ、ふふふ、私たちの子ですよ陛下、はぁ、はぁ」


「そうだな、ほらほらお父さんですよー」


お父さん?はあ?全く父親の声ではない。

まだ視界がぼやけているが、聴覚ははっきりしている。

さすが死ぬ直前まで残る感覚だと呼ばれるだけはある。


「きゃっきゃっ」

この声を出しているのは俺か?

俺は今、どこにいてどんな状況下に置かれているのだろうか。


「早速子供たちにも見せましょう、あなた。」


「そうだな、おいお前、子供を呼んで来い。」


なるほどなるほど、整理しよう。

俺は昼ご飯を食べた後、あまりの寝心地の良さに深い眠りについてしまった。

機材の上で寝たことがまずかったのだろう。

寝相の悪さ故、踊り場の柵を超え、約1階分を落下、何の身構えもなくおちた。

そして、運悪く頭を打ち、そのままお陀仏と。

ここまではわかる。

だが、こんなことが本当にあるのだろうか、俺の脳裏に二文字の単語が浮かぶ。


転生


中学生男子なら、一度は呼んだことのあるラノベのカテゴリー。

暇な授業中に一度は妄想して、どんな人生を送ろうか考える話のネタ。

もしだ、もし転生していると考えよう。

その場合俺は何に転生したんだ?

会話の内容的に社会性のある生き物に転生したことは間違いない。

その中で、結構王族の家族に生まれたことも間違いない。

あとは何だろう、子供が何人かいるっぽいな。


まあ、王族に生まれたということは、今すぐに死ぬようなことは起きないだろう。

自由に動けるようになるまで、しばらく媚を売っておこう。

まあ、体を動かすことは今のところできないが。


ドタドタドタドタ


うるさいなあ、こちらは生まれたての新生児だぞ。

静かにしておくのが常識だろう。


「これが父上、これが弟ですか?」

言葉を覚えたてのとても幼い声が聞こえる。


「そういえば、お前は赤ちゃんを見るのは初めてだな。」

これは陛下と呼ばれていた人だな。

口調がさっき指示してた時とは全然違う、赤ちゃんに向けてしゃべるそれだ。


「そうです、父上。

これが、赤ちゃん。とてもかわいいですね。」

俺がそれくらいの時はそこら中に落書きしてたぞ。

なんて早熟した赤ちゃんなんだ。

なんだかんだして、いろいろな人に抱かれた。

抱かれた人数的に、家族構成は王、王妃、子供三人といったところだろう。

生まれて一日目にしては、かなり良いスタートダッシュだな。


赤ちゃんというのは体力がないな、もう眠い。

目が見えない分、簡単に眠れるな。


「おぎゃー、おぎゃー」

どうやら、意識のない間に何日かたっていたらしい。

至近距離ならものが見えるようになっている。

泣くことに関しては、どうしてもやめられない。

本能なのだろう。


「はいはい、おなかがすきましたねー」

遠くから、そう聞こえてくる、王妃の声だ。


「おっぱいでちゅよー」

!?

おっぱいだと!?そうか、俺は今赤ちゃん、おっぱいを吸っても豪放な年齢なのか。

うっひょー、これがおっぱいかぁ、少し甘いくでまろやか。

だが、どうしてだろうか、精神しか成熟していないからだろうか。

まったくもって欲情しない。念願の生おっぱいだぞ。体が新生児だからか?

くそ、こんな賢者タイムのような状態で、初おっぱいを拝見することになるなんて。

残念だ。

腹が膨れてきて、体もだいぶおとなしくなったな。

まあまだできることないし、今の状況を楽しむとするか。


死んだことは間違いない。元の世界に戻っても、俺の体は墓の下にあるだろう。

仕方がない、0歳から記憶があるんだ、この人生を最高のものにして、やりたいことを全部やろう。


そうして、俺の二週目の人生が始まった。


思ったより大変なんだね、面白いね。

来週までに次は書くよ。

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