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第2話 母の旧友



 宣言通り、母にキツく抱きしめられてルナトは夜を明かした。母は保存食は荷物に入れ、足の早い食べ物をササッと調理した。懐かしい味だったが、それ以上に母が食べさせようとしてきてなんだか味をしっかりと味わえなかった。





 そして昼過ぎ、母の旧友に会うため、ルナトと母のマリアは隣町へと向かった。隣町と言っても、2人が住んでいた家は周囲に他の建物もない草原のど真ん中なので、向かうのに少し時間が掛かる。



「母さんの旧友ってどんな人なの?」



「うーん……そうねぇ。お母さんより戦うのが好きで、サッパリしてる人よ。あとかなり強いわ」



 母は昔、大陸を旅する賞金稼ぎだったらしい。その道中でリーティという人に出会い、2人でパーティを組んだという。2人はかなりの実力を持っていたといい、『地獄の黙示録』と言われていたと母は語る。



「隣町には行かない訳じゃないし、会えない理由があるって事も無いのだけれど……タイミング、かしら?」



「そうなんだ……」



 これから会いに行くリーティという女性の事を一通り聞きながら歩いていると、目の前の茂みがガサガサと揺れ、スライムが飛び込んで来た。



「あら?」



 スライムは母の胸元に飛び込んでしまい、出口を探してモゾモゾと動いている。特に衣服等を溶かすような種類でもないので一安心である。



「もう、出てきなさいっ!」



 母は服の裾を大きく捲り、大きな紫色のブラを露わにしながら、胸からスライムを引き離し、遠くへと放るが、スライムはめげずにまた突っ込んできた。



「かっ、母さん!」



「もう、お仕置ね」



 母は鞘を小脇に構え、聖剣を抜刀する構えを見せる。しかしその聖剣は選ばれし者にしか抜刀出来ず、どれだけの力自慢でも、ルナト以外は引き抜く事は出来なかった。



「せ、聖剣は……!」



「行くわよっ!」



スッ…………カッ──────!!!!!!



「────!」(スライムだったもの)





 自分にしか使えない、と言うつもりだった。しかし鞘から抜かれた聖剣はルナトが使っていた頃よりも更に光り輝き、その光を浴びたスライムは一瞬で消滅してしまった。



「やっぱりお母さんも聖剣、使えるわね」



「いや使える使えないの話じゃなくない……?」



 満足げに微笑む母だったが、ルナトはあまりにも自分が使っていた頃よりも聖剣自体が強くなっている事に突っ込まざるを得なかった。



「子を想う母は強し、よ?」



「う、うん……」



 よく分からないが、なんとなく納得させられてしまった。その後も道中で何匹かスライムや別種のモンスター達と遭遇、戦闘となったが、やはり母が抜刀するだけで聖剣は異様な光を放ち、モンスターは断末魔すら許されず瞬時に消滅した。

 そして母が17匹目のモンスターを消滅させてから少しして、隣町の入口が見えてきた。



「大丈夫?疲れてない?」



「うん、大丈夫」



 先程から何の役にも立っておらず、ただ母と一緒に歩いているだけだが、やはりこの姿だと体力も子供と同等になっているので、実際はかなり疲れていた。しかし疲れたと言うのもなんだか母に申し訳なく感じて、その場は強がった。



「……そう。じゃあもう少しの辛抱だから、頑張ろうね。ダメだったら言うのよ?」



「う、うん」



(ふふ、昔を思い出すわね……)



 母には強がりがお見通しのようで、歩くルナトを見て懐かしそうに微笑むのだった。







〜酒場〜



「ドゥヒヒヒヒヒ!なぁ姉ちゃん!俺と飲もうや!そのでっかい胸を見てるだけで酒が進むってもんよ!」



 誰の目から見ても泥酔した男が、1人で飲んでいる暗い赤のウルフカットの女性にダラダラと絡んでいる。彼女は少し離れた席で静かに飲んでいたのだが、男はそんなものお構い無しのようであった。



 周囲で飲んでいる他の男達は、その光景をニヤニヤと見つめていた。それと同時に、僅かに同情的な視線も向けていた。……男の方に。

 女性は少しため息をつくと、やっと男と目を合わせ、口を開いた。



「あっそう、じゃあアタシと飲める資格があるかテストしてやるわ」



「そうこなくっちゃなぁ…………アレ?」



 女性が首をコキコキと鳴らし立ち上がると同時に、男の表情から笑みが消え、なんだか男の酔いも醒めちゃうかもというかなんというか普通に醒めちゃった。





 立ち上がった彼女の身長は190cm程あり、絡んできた男を完全に見下ろしていた。そして彼は酔っていて気が付かなかったが、全身がかなり引き締まっており、腕は圧縮された筋肉をなんとか皮膚で押さえ込んでますよというような質感、太腿はまるで大木から切り出された丸太のよう。



「アレアレアレアレアレアレ〜〜〜〜?でかッ!でかくない!?全部でかい!デカーッ!」



 デカデカ叫ぶ男の手を、彼女は微笑みながら握り込む。男の手がまるで小動物のようにすっぽりと覆われてしまう。



「じゃあ腕相撲で勝った方がここの飲み代オゴリな。せーのっ」



「待って待っ──────」



ゴパァンッッ!!



 叩きつけられた男の手の甲はテーブルを破壊し、勢いそのままに床まで叩き付けられ、床板を派手に破壊しながら男の半身を埋めた。



「弱っ。情けないね」



「流石はリーティだ!!!ハハハ全部そいつの奢りだな!さぁ飲んだ飲んだ!!」



 酒場の店主や他に飲んでいた男達(どいつもこいつも既に1回以上半身を埋められている)は爆笑しながら再び酒を飲み始めた。





「相変わらずね、リーティ」



「その声は……マリア!なんだ久しぶりじゃないか!」



 リーティは聴き馴染んだ声に振り向く。そこには街に着いた勇者のルナト、その母であるマリアが立っていた。



「街には来てたけどなかなか顔を出す用事がなくてね。腕っ節は全然衰えてないようで安心したわ」



「まったく、相変わらず変な所で気を使うね。マリアも。アンタはどう?少し平和に慣れすぎたんじゃない?」



 久しぶりの再会に2人は熱く抱擁するが、互いの巨大な胸が密着しあい、つきたての餅のように両サイドから溢れる。



「す……すげぇ……」



 酒場の男達はこの光景を絶対に脳と目に焼き付けるぞと、人生で一番脳をフル稼働させていた。





〇リーティ Lv71

・職業…戦士

・種族…人間

・年齢…37

・体型…ボンッ・バキッ・ボンッ

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