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※サメくん視点(してん)(はなし)です。

 


「しまった…………」



 タカくんとサメくんが、ふたたび”しょうぶ”のやくそくをした()の――つぎのひ。

 サメくんは、きのうとおなじように、まっさおにかがやく”うみ”のうえを、すいーっと……およいではいませんでした。

 それどころか、きのうも、すいーっとおよぐことは、できていませんでした。

 なぜなら、


「そうだ……。ボクは、やっぱり、”うみ”をでることなんて……できやしなかったんだ」


 そのとおりでした。

 サメくんは、”りく”のうえをはしることも、あるくことも……ましてや、タカくんみたいに”そら”をとぶことなんて、ゆめのまたゆめでした。

 それでも、サメくんは、タカくんと”しょうぶ”のやくそくをしてしまったからには、なにがなんでもタカくんに()()()()とおもっていたのです。

 けれども、そんなおもいをいくらつよくにぎりしめていても、いきなりサメくんが”りく”のうえでいきをして、じゆうにあるけるようになるわけでは……ありません。

”うみ”のなみがいちばんあさい、”りく”のすなはまにちかいところで、グルグルグルグル、わっかをえがいておよぎつづける……。


 それが、サメくんの『いま』でした。


 すなはまには、だれもいません。

 ザザーン、ザザーンと、こっちへきては、あっちへいく、きまぐれななみと……ポツンとひとり、サメくんだけです。

 きのうは、そうではありませんでした。

 なんにんかのどうぶつたちが、すなはまで、ひなたぼっこをしたり、かけっこをしたり、おやまをつくったりして、あそんでいました。

 しかし、きのうサメくんがそこへやってくると……すなはまであそんでいたどうぶつたちはもちろん、そのちかくをとおりかかったどうぶつたちも、サメくんをみつけるやいなや、ピューっとどこかへにげていき、パタリとすがたをみせなくなったのです。

 おそらく、サメくんのもっている、せなかのギザギザのせいでしょう。

 それは、”うみ”のなかでの、サメくんのつよさの()()()でもありました。

 ただ、”うみ”のそとへギザギザがでてくると、おひさまのひかりがあたって、それのギロリとするどくとんがったようすが、まわりからよくわかるのです。

 そして、きのうすなはまにいた”りく”のどうぶつたちは、ほかのなかまにも、「いまサメくんがすなはまにいる」ことをつたえているのかもしれません。

 きょう、すなはまにだれもいないのは、おそらく、そういうわけでした。


「ちくしょう……ちくしょう……」


 サメくんは、くやしいおもいでむねがいっぱいになり、()からポロリとなみだがこぼれました。

”うみ”のなかを、あれだけじゆうにおよげているボクのことだから、”りく”だって”そら”だって、その()になれば、すいすいっとおよげてしまうだろう……。

 どんなばしょだって、つよいボクならへっちゃらさ……サメくんは、そうしんじていました。

 ――でも、そうではありませんでした。

 じっさいに、サメくんは、いっぽでも”りく”へでようとすれば、たちまちにして、いきがくるしくなって、うごけなくなってしまいます。

 ちょっとまえに、シャチさんたちに()()()をうばわれ、”うみ”のうちがわから”うみ”のそとがわへとおしだされたときに、それはすでにしっていたことでした。

 しっていたのに、どうして……。


「…………」


 しかし、このままでは、なにもかわることはないし、なにもはじまりません。

 なにもエサをとってこなければ、タカくんはまえよりも、サメくんをバカにしてくるかもしれません。


「それだけは……それだけは、ぜったいにイヤだ!!」


 サメくんは、よこにブンブンと、あたまをふりました。

 と、そのとき――サメくんの()に、せのたかいいっぽんの()が、うつりこみました。

 それは、タカくんがきのうと、そのまえの()にもとまっていた……タカくんが、ひとやすみしていたばしょでした。

 そういえば……と、サメくんは、おもいかえします。

 タカくんのとまっていたきは、”うみ”のちかくで、しかもあそこには、まぁるまるとしていて、おいしそうなくだものが、いーっぱいみのっていたよな……。

 あそこぐらいまでなら……もしかしたら…………ボクなら……………………。

 ちょ~~っとがまんすれば、いけるでしょ!


「よーし……」


 サメくんは、クッとかおをひきしめて、はらをくくりました。

 そして――



「えいっ、やーーーー!!」



 ドデン!! と、サメくんは、おもいきって”りく”にあがりました。

 でも、


「ぐえっ、ぐええええっ!? や、やっぱりムリ! ムリムリムリムリ!! お、おっおっ、おぼれっ、おぼれるぅ!! た、たすけてぇーー!!」


 ジタバタジタバタと、サメくんは、『いきができない』くるしさのあまり、あばれまわります。

 すなまみれになりながら、おおごえをあげて、さけびつづけます。

 そのこえをきいたのか、”りく”にすんでいるどうぶつたちは、もりのきぎのすきまからかおをだして、たかいところからすなはまを、のぞきこみました。

 しかし、だれひとりとして、サメくんのもとへは、ちかよりません。

 ポカポカと、ひざしのあたたかいおひるどき……。

 ザザーンと、なみのおとしかきこえないすなはまで……。

 サメくんは、いよいよ、あたまのなかが、まっしろになります…………。


(あぁ……クソっ。ボクは、もう、ダメそうだ……。あれだけちいさな『ハエくん』にだって、まけちゃいそうな……よわっちくて、ダメダメで、みっともない、こんなすがた……。なんて…………なんて、なさけないんだ……………………)


 サメくんは、そこで、()をうしなってしまいました。

 

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