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つぎのひ。
タカくんとサメくんは、やくそくどおり、おなじじかん、おなじばしょに、しゅうごうしました。
それぞれ、ふたりのとなりには、たーくさんのエサが、やまもりてんこもりになって、つまれていました。
”しょうぶ”は、『どっちがエサをおおくとることができるか』、というないようです。
だから、それぞれのエサのかずを、じゅんばんにかぞえれば、かちまけがきまるということですが……しかし、どうやら、そのようなふんいきではありません。
サメくんのいいぶんは、こうでした。
「ああとも。ボクはね、こーんなにたくさん、ちいさいさかなをとってきたさ。でもタカくん……キミは、”どうぶつ”だけじゃなくて、”くだもの”や、”やさい”までとってきているじゃないか! これはズルだ! ぜったいにズルだ!」
はんたいに、タカくんのいいぶんは、こうでした。
「まったく、しつれいだなぁ、キミは。いいかい? この”しょうぶ”のないようは、『どっちがエサをおおくとることができるか』……だったよね? サメくん。ボクはまちがいなく、たべられる・たべるためのエサをとってきているから、ズルなんて、していないんじゃないのかい? むしろ、いろいろとってきて、こーんなにこーーんなにたくさんなんだから、ボクのほうが、キミよりもかっているって、いえないかい?」
サメくんは、タカくんのことばをきくと、プンスカとおこりながら、さらにいいかえしました。
「いや、ボクのほうがたくさんだ! ボクのかちだね!」
タカくんも、サメくんのことばをきくと、カチンとおこって、さらにさらにいいかえしました。
「いいや、ボクのかちだね! みてごらんよ、ボクは、イノシシだってつかまえてきたんだぞ! それだけじゃない。”のうさぎ”も、”こじか”も……かわにはいって、びっしょびしょになって、”なまず”だってとってきたんだ! サメくんはぁ……そういえば、ちいさいさかなだけ、だったよね? エサのひとつひとつがおおきいから、やっぱり、この”しょうぶ”、ボクのかちできまりだね……!」
タカくんは、フフンとはなをならして、ドンとむねをはります。
「いやいや、やっぱりボクが……」
「いやいやいやいや、キミじゃなくて、ボクだってば……」
「なにおう! ボクはアレがアレで、コレがコレで……!!」
「なにおう! ボクこそソレがソレで、アレがアレで……!!」
こんなちょうしで、ふたりのいいあらそいは、しばらくつづきました。
やがて、タカくんもサメくんも、たいりょくがスッカラカンになって、ゼェゼェといきをきらしはじめたとき……またまたサメくんが、あるていあんをしました。
「ぐぐぐ、ぐぐぐぐ……ようし、そんなにいうなら、それじゃあもうひとつ、ボクとキミとで”しょうぶ”といこうじゃないか!」
「ええ!? もういっかい、おなじことをしろっていうのかい?」
「チッチッチ。おなじ”しょうぶ”をしちゃあ、つまらないだろ? だから、こんどは、おたがいのエサをとるばしょをこうかんして、”しょうぶ”をするんだ! どうだい? これで、けっちゃくをつけようじゃないか、タカくん……!」
サメくんは、ビシッと、タカくんにそういいました。
はなしをきいたタカくんは……むねのおくで、しめた! と、おもいました。
タカくんは、フフンとひとつ、はなをならします。
「……ああ、いいとも。ボクがまけることなんて、やっぱりありえないんだから、その”しょうぶ”も、よろこんでうけることにするよ、サメくん。それじゃあ、いまから”しょうぶ”をはじめて……あしたのおひるどき、またここにしゅうごう、ということで……いいね?」
「よし、のった! あぁ、だけど、こんどはキミがズルをしないように……ひとつ、ルールをきめておこう。――エサのしゅるいは”ひとつ”だけ。それと、エサにしていいのは、”どうぶつ”のみ……わかったね? タカくん」
「ああ、それでいいとも。……ちなみに、ボクはズルなんてしていないからな、サメくん」
タカくんとサメくんは、おたがいにコクリと、うなずきました。
これでまた、ふたりのあいだに、”しょうぶ”のやくそくが、できてしまいました。
ふたりは、いつもかえるほうこうではなく、そのまはんたいのほうこうへ、からだをむけます。
タカくんは”うみ”のほうへ、サメくんは”りく”のほうへ……。
「バイバイ、タカくん。やっぱり、まけるのがこわくなったって、いま、いってもいいんだよ? にげたことには、しないでおいてあげるからさ」
「そっちこそ、こんかいの”しょうぶ”で、ボクのつよさがよ~くわかったとおもうから……とくべつに、ズルとか、ひきょうなことは、ゆるしてあげてもいいよ? それぐらいじゃなきゃあ、ボクとしても、いいしょうぶにならないと、おもうんだよね。またあした、サメくん。キミがないても、ボクはしらないからね」
ふたりとも、おたがいのことについて、いいたいことをぜんぶぶつけると、こんどこそ、おわかれしました。
サメくんがいなくなったあと、タカくんはフフンとひとつはなをならすと、バサッと、つばさをひろげました。
「クックック。あーあ、ほんっと、バカなヤツだなぁサメくんは。ボクがかつことは、とっくにきまっているっていうのに。ようし、この”しょうぶ”にかてば、ボクははれて、ほんとうの……”せかいのおうさま”になれるんだ……!」
この”しょうぶ”について、どうやらタカくんは、きょうの”しょうぶ”よりも、おおきなじしんがあるようです。
タカくんは、おひるどきの……まっさおにかがやく”うみ”のうえを、すいーっと、とんでいきます――。