ぷろろーぐ
この、ひろいひろーいせかいには、たぁーくさんのどうぶつたちがすんでいます。
そらをとべるもの、みずのなかをおよげるもの、りくのうえをはやくはしれるもの……。
かたちも、いろも、おおきさも、できることもできないことも、なにひとつとしておなじでないかれらでしたが、まあるいほしのなかで、ぎゅうぎゅうになってくらしていました。
その”ぎゅうぎゅう”がいやになったのか、あるときだれかがこうおもいました。
「そうだ。みんながいなくなって、じぶんがひとりになれば、このひろーいせかいは、ぜんぶじぶんのものになるじゃないか……!」
こうおもっただれかは、となりにいたべつのだれかをゴン! と、たたきました。
「いったいなあ。なにをするのさ」
「へん。よわっちいキミがわるいんだ。つよいボクが、よわっちいキミなんかのために、いばしょをゆずってたのがそもそもおかしかったんだ。よわっちいヤツらがぎゅうぎゅうで、ほんとうに、あつくてかなわないってもんだよ」
「なにおう。ボクのほうがキミなんかより、なんばいもなーんばいも、つよいんだからな!」
「ほほう。じゃあ、どちらがつよいか、いまからためしてみようじゃないか」
「のぞむところさ!」
こうして、だれかと、べつのだれかは、”ケンカ”というものをはじめました。
しばらくして、どちらかがかって、どちらかがまけました。
やくそくどおり、かったほうは、まけたほうのいばしょを、じぶんのものにしました。
かったほうは、まえよりものびのびとくらせるようになって、とてもよろこびました。
このようすを、きのかげにかくれてこっそりとみていた、またまたべつのだれかがいました。
ひとりではありません、たくさんです。
「いいなー、いいなー」と、のびのびとくらせることに、みんなうらやましくなってしまい、それからというもの、せかいのあちこちで”ケンカ”がおこりました。
そらのうえでも、みずのなかでも、りくのうえでも……。
『かったものが、まけたもののいばしょやいのちを、たべることができる』
というルールまでかってにつくられ、「どちらがつよいのか」「どちらがすぐれているのか」、まいにちまいにち、どうぶつたちは、きょうそうにむちゅうになりました。
どうぶつたちは、じぶんがいちばんになって、このせかいで、だれよりもすずしく、だれよりものびのびとくらしたいと、つよくねがったのです。
こうして、せかいのようすがガラリとかわって、それがあたりまえになるぐらいに、ながいながーいじかんがすぎました…………。