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第33話 冒険前の準備! そして新たな仲間。

「休憩後は座学。ダンジョンに関する情報を学んで来い!」


 今日も俺たちの訓練は続く。

 格闘戦の訓練で、俺はナナコさんに投げられ、マサアキさんのゴムナイフでぶった切られた。

 俺は、今日も休憩室で倒れ伏している。


「はぁ。棒術とか杖なら、もう少しまともに戦えるんだけど、ナイフは不得意なんだよな。投げ技とかも得意じゃないし」


 接近戦で使う技術には他にも銃剣術などがあるが、俺には向かない。

 フルサイズの自動小銃じゃないと銃剣は使い辛い。

 魔法を使う以上、手を開けないといけない自分に不向きだ。


「接近戦のバリエーションは多くあった方が有利だよ? 相手の手の内を知る意味でもね。剣や斧の使い方が分かれば避けやすいよ」


「そーよ。わたし、今度の装備に戦斧を追加する予定なの。オロチの首飛ばしは、わたしに任せてね、ハルトきゅん!」


 俺たちは、配信冒険者が通常のハイドラと戦った動画を何回も見ている。

 ギリシャ神話で語られる魔獣、ヘラクレスと戦い倒されたものだが、猛毒の吐息(ポイゾン・ブレス)も吐く強敵だ。

 防毒面や呼吸器も既に準備してもらっているから、後はどうやって倒すか。


 ……装甲、というか鱗が固いんだよな。俺の使う短機関銃なら眼くらいしか効きそうもないや。


 マサアキさんの銃はロシアアサルトの弾(7.62×39mm)にしたので、以前(5.45×45mm)よりは貫通力も上だ。

 しかし、重装甲のハイドラ相手だと、もう一段階上の攻撃方法が欲しい。


 グレネードランチャーも追加で装備はしているが、どこまで効くかは分からない。

 本音を言えば、対物ライフルクラスの攻撃力が欲しい。


「あ、二人に話していなかったっけ。実はパーティに増員を……」


 マサアキさんが何か話しかけた時、ドンと休憩室のドアが開かれた。


御子神(みこがみ)! 居るか!? オレは、お前に話が有る」


 突然ドアを開いた御曹司、渕島(フチジマ) (タダシ)が叫んだ。


  ◆ ◇ ◆ ◇



「で、何の御用ですか。御曹司?」


 俺は座学後に、空き教室を借りて御曹司と向かい合っている。

 もちろん、マサアキさんとナナコさんも一緒にだ。


「マスダの件は、そ、そのぉ。わ、悪かった。俺がもっとしっかりしていれば、あんな馬鹿どもに操られる事も無かったはずだ」


「あの件は、『何も無かった』。事故で終わってますよ、御曹司。マスダさんら何人かは、ご家庭の都合で士官学校を去っただけと聞いていますし」


 俺は、今更過去の事は気にしないことにした。

 教官やその上が事件、いや事故として解決させた以上、当事者としても何も言うことも無い。

 俺自身、マスダに対して意趣返しも出来たので、もう気にはしてはいない。

 それに、御曹司は逆にマスダたち配下に酷い『教育』を受けてきた被害者でもある。


 ……そりゃ他の被害者の子達には、マスダが直接謝って欲しい気がするがね。


「そ、それでも俺の気が済まない。事件で傷ついた子達には個別に謝罪をした。だが、御子神。お前にはまだ借りを返し切れていない。入学試験の時も、お前がオレを止めてくれなかったら……」


「あの時も『何も無かった』事になってますよ。なので謝罪も感謝も必要無いです。俺、今は他の案件で忙しいので、謝るのだけでしたら、すいませんが……」


 俺自身、アヤとは毎日電話が出来ているし、数日おきには授業や研修で顔を逢わせている。

 なので、そんじょそこらの細かい件で怒る気すら起きないくらい、ご機嫌なのだ。


「その事で話が有ったんだ。御子神らは特別にダンジョンに行くんだろ? オレ、実家経由で話を聞いたんだ。で、オレもダンジョンに連れて行って欲しい。少しでもオマエの役に立って、借りを返したいんだ!」


「え? 御曹司がダンジョンに??」


 突然、御曹司が自分も俺たちと同行すると言い出し、俺たちは大きく驚いた。


 ・

 ・・


「つまり、御曹司は俺に借りを返すのと同時に実績が欲しいのですか?」


「ああ、その通りだ。オレはこれまでの失敗で親からも半分見放されている。今更ながら、オレは親や会社に甘えていたのだと思う」


 マスダ達、取り巻きら追放以降の御曹司。

 真面目に訓練や勉学に励んでいたが、友らしき人もおらず孤独になっていた。

 また本人が先程語ったのでは、両親からも配下の管理が甘いと叱責を受けたそうだ。


 ……俺に言わせれば、そんな配下を付けさせた両親も悪いと思うのだが。


「オレはなんとかして、両親にオレをちゃんと見て欲しいんだ。その為には、実績が欲しい。そこにオマエ、いや御子神の話は『渉りに船』だったんだ」


 御曹司、タダシは幼少期より企業ビジネスマンの両親にはあまり構われずに育ってきたとの事。

 企業貴族の子息として側使いに育てられてきた。

 追放されたマスダのような悪質配下は、その状況を利用し『軽い神輿』にしようとした。


 ……コイツも哀れな存在なんだよな。歪な社会の犠牲者か。CEOは世界やメガコーポを守る為の弊害まで知っているのかな?


「だから頼む! 荷物持ちで構わないから、オレをパーティに参加させてくれ」


「ハルトくん。どうする? 僕はキミの判断に任せるよ。僕は他にも人員追加の提案があるんだけどね」


「むぅぅ。わたしはイヤ! コイツ、えっちな眼でわたしを見るし、これまでもいーっぱい嫌がらせしてくるんだもん」


 ハルトくんはニコニコ顔、ナナコさんは膨れっ面で俺に結果を求めてくる。

 俺は数秒考え、答えを出した。


「御曹司、俺は……」

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― 新着の感想 ―
[一言] ハルトの性格だと断らない可能性が高いよね。 折衷案でバックアップクルーに入れるくらいかな?
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