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第3話 スラム街での戦闘。迫りくるモンスターの群れ!

「ナウマク・サンマンダ・ボダナン・アギャナウエイ・ソワカ! 火天(アグニ)・火矢弾!」


 俺は火天(アグニ)の印を結びながら、火天真言を唱える。

 俺の呪に応じて、俺の周囲に複数の燃え盛る矢が出現し、敵に向かって飛んでいく。

 火矢は狙いを外さずモンスター達に全弾着弾。

 確実にモンスターの集団を撃破し、黒いマナのチリに替えていく。

 このころになれば、ゴブリンら人型モンスターに対し罪悪感よりも嫌悪感や面倒くささが増してきており、俺は問答無用にゴブリンらを倒した。


 ……これも慣れか? 死体が残らないのもあるのかな? っていうか、あまりにコイツらが醜悪すぎて手加減する気も起きやしないや。ただ、怒りで法術を使い過ぎないようマナ残量には気を付け無いと。


 ゴブリンらは誰構わず人を襲い、その死肉を喰らう。

 その悪意に満ちた姿を見れば、罪悪感など何処かにふっとぶ。

 俺は、ゴブリンを容赦なく雷撃を纏わせた錫杖で殴り飛ばした。


 俺は爺ちゃん、師匠がいつも言っていた言葉を思い出しつつ、体感で体内マナ残量を感じ取った。


「ハルト。術士は魔法に『使われ』ちゃならん。魔法は手札の一つ、興奮して大技をドカドカ使うのは馬鹿でも出来る。賢い術士は小技を器用に使うぞ。術士は、頭をつかってナンボさ」


 俺は背後に三人、ナナコさんと子供たちを庇いながら「ダンジョン」に落ちたスラム街を逃亡する。

 時折迫るゴブリンらを真言呪法で薙ぎ払いながら。

 既に時間は夕刻、黄昏(たそがれ)(トキ)であり逢魔(おうま)が時。

 魔物(モンスター)たちが暴れる時間。


「ハルトくん、キミって凄いんだね。わたし、魔法使いさんには数回会った事あるけど、キミみたいに魔法を自由に使う人は見た事無いの」


「お、俺なんて。まだまだですよ、亡くなった師匠に比べれば。で、まだ迎えは来ないんですか、小日向さん?」


 俺は、こんな状態にも関わらずウキウキしているナナコさんに少しイラつきながらも、周囲から迫る雑魚モンスターらを撃破していった。


「もうすぐのはず……。あ! 今来ましたぁ」


 ナナコさんが指さす先、そこには的確にモンスター達を殲滅しながら進んでくる部隊が居た。


小日向(こひなた)士長(しちょう)! 勝手に動くなと何回言ったら分かるんだ!? まあ、無事でよかった。とりあえず、今は部隊と合流してそのまま避難民を保護しろ。民間人の君、今回はありがとう。安心して部隊についてきなさい」


「はいですぅ」

「分かりました」


 部隊の偉い人に怒られてしょんぼり顔のナナコさんの様子に苦笑しつつ、俺はひと息を入れた。


 ……もうこれで大丈夫だろう。フチナダの正規兵、その強さを見せてもらおうかな。


 俺は安心しながら部隊の真ん中付近、周囲を屈強な兵士たちに守られて進む。


 ……全員、動きがキビキビとしているし、敵の発見から撃破まで凄く早い。もし、俺が今戦ったら絶対に勝てないな。


 今、俺がアヤをフチナダから強引に奪おうとすれば、フチナダの正規部隊と戦う事になる。

 師匠からの言葉、「内部から取り戻せ」という助言が無ければ、俺はこの部隊と一人で戦い、今頃は死んでいたに違いない。


 ……出世して内部からアヤを取り戻す。その為にも今は生き残って、士官学校に入学するんだ!


 「た、隊長! ト、トロル(巨人)です。銃が、銃が効きません!」


 そんな時、前方の兵士から悲鳴が上がる。

 其方に目をむけると人間よりも三回りは大きい灰色な肌の巨人が暴れて居た。


「ぎゅぐわぁぁぁ!」


 周囲から銃撃をいくつも受けながらも一切気にせず、奇声を叫びながら手に持った棍棒を振り回すトロル。

 小銃(ライフル)弾を受けた傷は、血を流しながらも即時に煙を上げて再生し、弾丸が岩のような硬い皮膚から押し出されていく。

 拳銃弾などは、皮膚すらも貫通していない。


 ……アサルトライフルでやっとか。サブマシンガンや拳銃じゃ足止めにもなってないぞ?


 銃撃を与える兵らは器用に棍棒を避けるが、目標を外れた棍棒はアスファルト舗装されているはずの地面に大きなクレーターを穿(うが)つ。

 また振り回された棍棒は、放棄されていた自動車を簡単に吹き飛ばした。


「たいちょー。あんなのどう倒すんですかぁ!」


「小日向、狼狽えるな。ああ動きが早ければミサイルも当てられん。ち、ちきしょぉ。アイツは太陽光に弱いんだが、夕刻の上に曇がぶ厚いんじゃぁ」


 ……太陽光? なら、あの術が使えるかも!


 隊長らしき人の言葉で、俺は策を思いついた。


「すいません、隊長さん。太陽光やそれに近い光があれば、トロルは倒せるんですか?」


「あ、ああ。太陽光の下、こと紫外線を浴びせられればトロルの再生能力が薄れるはずなんだが」


「なら、俺が太陽光を呼ぶ術を使います。皆さん、それまで時間稼ぎをお願い出来ますか?」


「それは本当か? しかし、民間の少年にそれを頼むのは……」


 俺の言葉に、隊長さんは一瞬躊躇する。

 身元も分からない坊主、それも少年の言う事を信じてもらえないのもしょうがないだろう。


「たいちょー。ハルトくんはすっごい魔法使いです。絶対に大丈夫なの!」


「小日向……。よし、分かった。皆、この坊主が術を使う時間を稼げ!」

「了解!」


 真剣な顔で俺の事を褒めたたえるナナコさんの口添えが効いたのか、俺の意見を取り入れてくれた隊長さん。

 俺は、その思いに(むく)いるべく術を唱える。


 錫杖を地面に置き、印を結び集中をする。

 兵士さん達が必死に顔辺りを銃撃して足止めをしている中、トロルを凝視した。


「オン・ソリヤハラバヤ・ソワカ! 日光菩薩(スーリヤプラバ)・千日光波!」


 周囲を囲んで銃撃を繰り返す兵らに眼を狙われてイラつくトロル。

 その隙を狙い、俺は呪力を光の束、ビームに替えてトロルを撃った。


「ぐわぁぁぁ!」


 俺の一撃は、トロルの腹に大きな穴を穿つ。

 そして岩のように固い肌にヒビが入りだし、トロルは酷く苦しんだ。


「このまま押し切るぞー!」

「おー!」


 後は、フチナダ正規兵たちの独壇場。

 ヒビに目がけて銃弾の雨を撃ち込み、トロルを被害ゼロで撃ち倒した。


「やったー! 言ったでしょ、たいちょー。ハルトくんで凄いんだからぁ。ね、君たちもそう思うよね」

「うん、おねーちゃん。おにーちゃん、つよーい!」


「まあ、その通りだったな。で、小日向士長。キミにはこの後、ゆっくり話を聞かせてもらおうか。ハルトくんだったっけ。君にも少々話を聞かせてくれないかな?」


「はい」


 子供たち相手に俺の事を自分の事の様に自慢するナナコさん。

 そんな彼女に、隊長さんが俺も含めて聴聞(ちょうもん)を提示する。


 少々事態が厄介になった事を思いながらも、俺は子供たちが救われた事に安堵した。

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