09 かくれんぼで告解室に入り込んでしまった孤児
たまには子供らしく遊んでみました。
告解室でかくれんぼしていた孤児が、一人の少年の告白を聞いてしまった。
孤児には告白を聞く立場にはなく、本来なら告白が始まる前に、神父様を呼んできますと言わなければならないのだけれど、孤児は口をふさいで物音を立てずにじっとしてしまっていた。
かくれんぼをしていたのもあったし、孤児は好奇心に勝てなかったのだ。
その少年は度々告解室にやってくるが、神父様が居ると、世間話だけをして帰っていく。
告解室に神父がいないと、小さな声でボソボソと何かを告白しているのだ。
きっと神父様にも話せないような内容なのだろうと孤児達は噂していた。
教会内で、孤児達の目が届いていない場所はどこにもない。
孤児達は自分たちの食い扶持を逃したりしないからだ。
客を逃すのはいつも神父様だ。
本当に役に立たない神父様で、どうしようもない。
神父として受け入れられないことが色々とあるのだろうが、一日のおかずが一品でも、肉の一欠けでも増えるなら、どんなことでも引き受けたいのが孤児達だ。
告解室の少年はぶつぶつと告白を続けている。
聞いている孤児は恐ろしくて、今にも声を上げそうになっている。
必死に身を縮こまらせて、告解室の少年が出ていくのをひたすら待った。
告解室の少年は、告白したことに満足したのか、神に感謝して、また来ますと言って帰っていった。
告解室にいた孤児はいつ出ていったらいいのか解らず、身を縮こまらせたままじっとしていると、孤児がいる告解室の扉が開けられて、声を出せない叫び声をあげた。
告解室にいた孤児の怯えように、何を聞いたんだ?と聞かれたが、孤児は答えられなかった。
孤児はいつもは頼りにならない神父様にお願いして、告解室で告白を聞いてもらった。
ちょっとした好奇心だったのだ。それ以上でもそれ以下でもなかった。
ごめんなさいと何度も謝って、聞いてしまったことを神父様に告白した。
神父様は孤児の話を聞いて、真っ青になり、どうすればいいのか悩むことになった。
神父様が告解室で告白されたことなら、どんな内容でも誰にも告げることはできない。
けれど聞いたのは孤児だ。
口を閉ざすことにも限界が来るかもしれない。
警察に話したほうがいいのか、判断できなくて、上へと相談した。
上の方々は孤児はその秘密を守れそうか?と訪ねてきたが、こんな秘密を黙っていることはただの孤児にはできないと伝えると、刑事が告解室へとやってきた。
少年の告白を聞いてしまった孤児が、刑事に聞いてしまったことを伝えると、刑事は「ありがとう」と言って帰っていった。
それから十日経たない頃に告解室で告白していた少年が逮捕された。
三人の子供を誘拐して、その子供達を切り裂いて遊んでいたと報道されていた。
三人の遺体の捨て場も聞いていた孤児は、その場所を刑事に伝えていて、三人だけではなく他にも五人の子供の遺体が見つかった。
告解室で告白していた少年は、それは楽しそうに刑事たちにどうやって切り裂いていったのか、丁寧に話して聞かせたそうだ。
それから孤児達はかくれんぼで、絶対に告解室だけは使わなくなった。