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07 小さく可愛い悪魔の花嫁

 その結婚式は、大人と子供と言っていいほどの身長差があった。

 新郎の横に並び立つと、本当に誘拐されてきた子供が立たされているかのように見えた。

 

 でも、二人の笑顔は弾けるような笑顔だった。


 誓いの口づけをする時、新郎は腰を膝をついて尚、身をかがめてキスをしていた。


 小さな揉め事ひとつ起こらず順調に結婚式は進み、披露宴へと場を移していった。

 

 

 それから経った三ヶ月で、新郎だった男性の葬儀が執り行われることになった。

 はじめは順調に、若い死に涙は多く、葬儀が終わり墓所へと運ばれると、荒々しい格好の人達が一枚の紙を持って埋葬することは中止だと言った。


 荒々しい人達は警察の人達で、夫の死に不信を抱いた、母親が解剖を依頼したということだった。

 死因は心不全。

 ただし、死には至らない程の微量な毒が検出されたが、それは最近はやっている、健康サプリに含まれているものだと判明し、サプリの製造元が、槍玉にあがっているのが印象的な事件となった。


 それ以外は、心臓に負担がかかっている以外は何も問題はなく、亡くなられた夫の体格では心臓に負担はかかるだろうということで、なくなった夫は埋葬の許可が下りた。


 小さな妻は夫の死で、大金を手にして時の人になった。

 それから半年後、また背の高い新郎との結婚式を挙げた。


 孤児たちは、二度目も同じ教会で式を挙げるなんて、神経がどうかしていると言って笑っていた。

 今回も問題はなく淡々と結婚式は終わった。

 披露宴会場で新郎が胸を押さえて倒れるまでは。


 新婦が呆然と立ち尽くす横で、孤児たちは新郎に心臓マッサージをして、人工呼吸をして、新郎は一命をとりとめた。

 新婦はただ呆然と立っていただけだった。

 取り乱すこともなく、ただ呆然と。


 それから一ヶ月で新郎の葬式が行われることになった。

 新婦はまた、あのときのように苦しんでいる新郎をただ呆然と死ぬまで眺めていたのだろうか?と孤児たちは思った。


 死因はやはり心不全。今回は、葬式を執り行う前から警察に遺体が運び込まれ、解剖が行われた。

 調べても死の原因は解らず、今回も新婦は大金をせしめた。


 死を呼ぶ花嫁として貴族社会で一躍有名になったが、女は堂々としていた。


 今度は四十歳は年の離れた男を新郎に選んで結婚式が執り行われた。

 年をとった新郎は、新婦の装いに細かく口出しした以外は問題は起こらない。

 新婦側は結婚式に呼ばれるのも、なれたもので、新郎側のほうがオタオタしている。


 それは孤児たちにとっては初々しいものに見えたが、神父の目には異様に映ったと言っていた。

 まるでこの結婚をいやいや執り行っているように見えたというのだ。


 今度はたった一週間で新婦が心不全で亡くなった。

 新郎だった男は、満足そうに葬儀を執り行い、話題にはなったが、取り調べを受けることもなかった。


 ある日のこと、告解室に一人の年寄りが入ってきて、孫の敵を討ちましたと、告白してきた。

 孫は小さく可愛い悪魔に殺されたのだといい、私は小さく可愛い悪魔と同じことをして、殺してみせたのだと神父様に伝えた。


 どうやって殺したのかは言わなかったが、その老人は「私は地獄に落ちるかもしれません。けれど後悔はない。私は孫の敵を討ったのだから」と言って帰っていった。


 神父は、あの、小さな花嫁の最初の新郎とよく似た老人を無言で見送る以外出来ることはなかった。

 神父は聞かされたことは、誰にも打ち明けることはできないのだから。

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― 新着の感想 ―
[一言] もし誤解なのだとしても、同じ教会で式やったりしてる時点で…… 深い事情以前に復讐してくださいと言ってるようなもんだ
2023/11/27 23:25 退会済み
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