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――竜の息子と聖嶺の大地――  作者: たけまこと
第二章 穏やかな日々
46/221

翼竜との空中戦

2ー017

 

――翼竜との空中戦――

 

 翼竜に向かって走っていくリクリアの後ろをメディナが追っていく。


「待ってよリクリア、あの翼竜はどうしたの?あなたはあれの何を知っているというの?」 

「メディナ、これは私事の問題だ、お前は帰れこれ以上は危険だ」

「ヒロが私達が逃げる時間を稼いでくれているのよ、ヒロの気持ちを無視するの?」

 しかしリクリアは何も答えずに翼竜を追って走り続けるだけであった。

 

  *  *  *

 

 コタロウを追い抜きお父さんの近くまで飛行してくると、大きな翼竜が見えて来る。やはり先日見た翼竜と同じ種類の様だ。

 

『注意、以前目撃された物とは別の個体と認識』

『やはり、あれとは違うのか?』

『全体像は記録してあります、頭に角が付いており前回の物とは違っています』

 流石にメディナすごい観察眼である、予想はしていたがあれは特別な一頭と言う訳ではないようだ。少なくとも竜人族位の数はいるのではないのか?

 

 その翼竜のすぐそばまでお父さんが近づいているが、やはりと言うかものすごい大きさの違いが有る。

 見た目は確かに人工物では無く大きなトビトカゲの様に見える。

 長い首の後方に大きな蝙蝠のような翼をもち尻尾の様な物が後方に延びて行っている。

 胴体の部分は首の付け根から滑らかに膨れて直径が10メートル以上は有りそうに見える。前回の翼竜と同様に、首の根元に首輪のような居住区が見られる。

 

 大きさの対比から考えればかなりスマートな形状と言えなくもない。それでもやたら大きくてまさしく怪物という表現が正しく見える。

 翼竜は一直線に飛行して来るので、お父さんは旋回すると怪物と平行に飛んで相手を観察しているようだ。

 正面から立ち向かわないところは流石に前回の戦いから学んでいるようだ。

 ヒロはOVISを亜空間から出して全視界航行に移り怪物に接近する。

 

  *  *  *

 

「見て、あれを!」

 亜空間から飛び出したOVISを見たメディナが叫んだ。 

「黒い巨人だ、一体どこから飛び出してきたんだ?あれはこの大陸に住む魔獣の類か?」

「いえっ、あんな物は見たことが無いわ。そう言えば以前竜神様が黒い巨人に殴られたと言って顔を腫らしていたけど…」

 しかしこの時、メディナは変な既視感デジャブに囚われる。まるでずっと以前から知っているような感じだった。

 

「竜人がか?するとかなり高い能力の有る奴だと言うことになる、我々の敵か、味方なのか?何をするために姿を表したんだ?」

「敵…ではないわ…そういう事ではなく、あの巨人は以前からずっと身近にいたような気がするのだけれど…」

 その言葉を聞いてリクリアは足を止めるとリクリアを振り返る。

 

「そうなのか?私も何故かずっとそんな気がしていたんだ」

「まさか…リクリアさんも気がついていたの?」

 図らずも二人は目には見えないが同じ感覚を共有していた事に気がついた。

 二人は顔を見合わせる。さすが兎耳族である。ふたりとも亜空間に隠れたOVISそのものを感じ取っていたのだ。

 

  *  *  *

 

 いきなりコタロウの前に出現したOVISが翼竜に接近していくのに気が付いたのか?竜のお父さんが振り返ってこちらを見る。

 するとお父さんは怪物から離れてこちらに向かって方向を変えたではないか。

 

 いや、一直線にこちらに向かって飛んでくるな。

 

 いやいや、ものすごい勢いでこちらに向かって突進してくる。

 

「きさま、きさま、きさまーっ!この間は良くもやってくれたなー!」

 

 忘れてたーっ!このお父さん、この間OVISで殴ったんだっけーっ!

 

 竜のお父さんが全力で殴り掛かってくる。そのパンチを間一髪で躱すと振り返りざまにブレスを吹きかけて来た。

 

「わ〜っ、まてまてまて!話をしよ〜っ!」

 

「問答無用〜!怒りの尻尾を食らいやがれ〜っ!」

 

 お父さんはぐるりと一回転するとその尻尾でOVISを殴り飛ばす、大きい割には器用な事をやる、これが竜の必殺技なのか?

 

 ドカンという打撃音と共にOVISが吹っ飛ばされる、いったいなんなんだ、この尻尾の威力は!激しい衝撃に、飛行スーツの耐G機能が作動する。


「被害報告!」

 

『オートジャイロに一時的機能不全』

 ぐるぐる回りながら落下するOVISはすぐに体制を立て直す。

『反撃しますか?』

「却下ーっ!絶対に反撃するなーっ」

 顔を真っ赤にした竜の親父が再び殴り掛かってくる。


「うおおおお~~っ、竜人パンチの威力を思い知れ~~っ」

 

 どかどかどかっとOVISに連続パンチを繰り出すお父さん。ヒロは腕を使って頭部センサーを守る。

 

「お父ちゃん、何やってるのー?」

 コタロウの頭の上でカロロが騒いでいる。 

「あ~っ、そういえば前に誰かに殴られたと言って顔を腫らして帰ってきたことが有ったな~」

「あの人ー?竜人じゃないよー」

 やっとお父さんに追いついてきたコタロウとカロロが、二人の様子を見て何をやっているんだろうという顔をしていた。

 

「あやまる!この間の事は謝るから!ちょっと待ってくれ翼竜が来ているんだぞ」

 必死で詫びを入れるが、このオヤジはまったく聞いていない。 

「竜人のメンツに掛けてこの恥辱晴らさずにおくものかーっ」

「おいおいお〜い、ここに来た目的を完全に忘れてるぞ〜!」

 既に怪物の事は頭にないお父さんである。

 

「お父ちゃーん、うしろーっ!」

「「なにっ?」」

 

 ふたりが殴り合っている所に方向を変えた怪物の、大きく開けた口が迫っていた。

 

「「うわわわわ~っ」」

 

 慌てて体をひるがえして逃げるふたりの間を怪物の大きな体が通過する。大きすぎる怪物の体にはじかれた竜人とOVISはくるくる回りながら墜落していく。

 

「お父ちゃーん、落っこちるーっ」カロロの叫び声が聞こえた。

 

  *  *  *

 

「おお~っ見ろ、あの時の怪物がまた来襲してきたぞ」

 その姿を視界に納めたアラークが怪物を見てうなり声を上げる。

 

「何故こんな短い間に2頭もやってきたのかしら?こんな事は街の記録にも無かったわ」

「ナシリーヤよ、竜人の命に比べればワシらの命はずっと短い。あの怪物もまたあの様な巨体を得るのにはそれなりの年月を必要としたと考えれば、その期間を我らと拘らずに過ごしてきたのだろう」

「それが此処に来たということは彼らの故郷に何か異変が有ったのか、それとも誰かがあれを操って来たという事でしょうか?」

「竜人様と巨人があの怪物とやりあって炎を振りまいていまさあ、迂闊に近づくとやばいですぜ~」

 猫耳族のキャルトが周囲の勢子の監視から戻ってきて報告してくれた。

 

「あの黒い巨人は何なのだ?」

「以前ヒロさんと出会った日に竜神様が顔を腫らしていらしたでは有りませんか、あの時に竜神様が黒い巨人に殴られたとおっしゃっていました」 

「そうか、以前に竜人の警告を受けていたな、その時の話に出た巨人があれか」

「竜神様を殴ったということは敵対していたのでは無いのですか?あの者は敵か味方かは存じませんが、少なくとも今は竜人の攻撃から一方的に防御している様に見えますが?」

「あれはふたりで翼竜から逃げ回ってるだけだと思うのだが」

 今のところ周囲への類焼は起きていないが、両者で炎の塊を吐き散らかされてはかなわん、あんなものが暴れまわるとなればヤバすぎる。

 

「周囲を警戒!必要以上に怪物に近づくな、キャルトよ、ほかのチームにもそう伝えてくれ」

「アラーク、あんたはどうするんだ、逃げないのか?」

「竜人がやられたらな。ほかの獅子族に伝えてくれ、最悪の場合獅子族を集結させてヘル・ファイアを一斉に浴びせかける」

 街を攻撃する様子が見えたら街の正面に集結してヘル・ファイアの一斉照射を浴びせるしかあるまい。

 

「それであいつが死ななかったら?獅子族は全滅させられますぜ」

「竜共々ワシらは全滅だな……」

 ヘル・ファイアを打った獅子族は無力になる。そこを翼竜に襲われれば如何ともし難いだろう。 

 あいつは何の目的でここに飛んできたのだろう?捕食の為か?あいつの食性は材木だったはずなのに。

 竜にも見えるが鳥にも見える形状をしている。大きさから考えても魔法で飛んでいるのだろう。

 

 この近在では見たことのない種族であり、狩人ギルドの資料でも見たことはない。だとすれば奴が来たのは人外の地からだろうか?

 あんな大きさで飛行が出来るという事は、魔獣器官を持った超大型魔獣と言うことになるのだろう。

 あれ程大きな超大型魔獣は肉食では存在できない、捕食の面からも生き続けるのは難しいからだ。

 

  *  *  *

 

『オーヴィス、被害報告!』

『特に無し、反撃しますか?』

『まだだ、翼竜の様子を見る』

 

 何とか墜落から立ち直ったふたりに向かって怪物は体を反転して向かっていく。 

「な、なんじゃ~~っ、コイツいきなり向かってきおったぞ~っ!」

「こいつは俺たちを餌だと思っているのか?」

 流石に大きいので空中とはいえ動きは鈍い。

  

「な、なあ待てよこんな所で争っていると下のみんなが危険になると思わないか?」

 両手を開いてお父さんをなだめにかかるヒロである。

「そういえば貴様、この間と違い今日はちゃんと話が出来るではないか?」

「いやいやいや、さっきからずっとしゃべっているじゃないですか〜?」

 だめだ、やはりこの親父は頭に血が上って人の言う事を全然聞いてなかったんだ。

 

 先ほどまでは悠然と飛行していた怪物だったが、今ははっきりとふたりを獲物として捕らえているようだ。

 

「まっすぐこちらに向かってきます、明らかに俺たちを餌にするつもりの様ですよ」

「ならばどうする?このまま逃げるのか?」

 そんな事を言っている間に怪物の口がまた迫ってくる、しかもその口の中に真っ赤な火が見える。 

「いかん、こやつブレスを吐く気だ!」

 開いた口の大きさだけで10メートル以上ある、どんな威力のブレスなんだよ?

 

「冗談じゃない!下に大勢の人がいるんだぞ!」

 お父さんは怪物の正面から飛びつくと頭から飛び出している角に取りついて、強引に首をねじ曲げて頭を上に引き上げる。 

 

『グッエエエ〜〜ッ!?』

 怪物の首が上を向き、ブレスが吐き出される。ものすごい輻射熱を感じるが幸い下の森を直撃はしなかった。

 それでもブレスの一部が森に落ちたようで、森が燃え上がっている。上空からは見えないが、下ではみんな逃げているだろうか?

 ブレスを吐くのをやめた怪物は首を大きく動かしてお父さんを振り払う。

 お父さんはくるくる回りながら落ちていくが、すぐに体制を立て直して翼竜を威嚇している。

 

『敵戦力を分析、今のブレスは怒龍型戦闘艦の主砲の威力に匹敵します』

 怒龍型戦闘艦はヒロも乗っていたが、比較的小型の護衛艦に相当する。それでもその主砲は当たれば同クラスの戦闘艦を一撃で破壊できる威力が有る。

 

「OVISのバリアーで防げるか?」

『可能ですが、直撃は少なくない損傷を受ける可能性が大いと推測』

 またしても怪物は向きを変えるとヒロの方に向き直る。

 

「奴のセンサーはなんだ?」

『アクティブセンシングを感知できません、光学センサー、またはパッシブセンシングと推定……訂正、レーザーセンシングです、顔の額のコブからレーザーが出ております』

 

 その時怪物の顔に強力なレーザー砲が撃ち込まれ、怪物が悲鳴を上げた。


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